吉野川第十堰

吉野川第十堰について

吉野川第十堰（よしのがわだいじゅうぜき）は、徳島県の板野郡上板町第十新田と名西郡石井町藍畑にまたがって設けられた堰で、主に吉野川の水を分流する役割を持っています。河口から約14キロメートル離れたこの場所に位置し、地域の水利活動に重要な役割を果たしています。

歴史的背景

吉野川第十堰の歴史は1672年に遡ります。この年、蜂須賀綱通が徳島城の防御を強化するため、吉野川と別宮川を結ぶ水道の工事を始めました。この工事がきっかけで、洪水による水道の拡大が進み、別宮川は徐々に吉野川本川としての地位を確立しました。1932年には、この水系の名称が正式に「吉野川」と「旧吉野川」に分けられ、今日に至っています。

1752年には水稲栽培への影響を考慮し、旧吉野川への流量を確保するため、地域の第十村に堰が建設されました。この堰は、藩政下での最大の土木工事として位置づけられ、以降の新川拡大に伴い、何度かの改修を経て現在の形に至りました。青石組みの構造は、当時の技術を今に伝える貴重なものとされています。

可動堰化問題

最近では、吉野川第十堰の可動堰化に関する問題が注目を集めています。この計画は、洪水調整の観点から提案されました。1982年に建設省が発表した「吉野川水系工事実施基本計画」から始まり、1997年には徳島県知事が可動堰化を支持する発言をし、1998年には審議委員会がその必要性を認める答申を発表しました。

可動堰化を推進する意見には、台風や集中豪雨による水害のリスクを軽減するための治水対策が含まれています。過去の歴史においても、吉野川流域では大規模な水害が繰り返されており、上流での大雨による影響が懸念されています。具体的には、洪水時に水量を調整できる可動堰を設置することで、流量の制御が可能となるという考え方が根底にあります。

しかし、可動堰化に対する反発も強く、環境への影響や巨額の建設費用が問題視されています。新たな可動堰の構築が下流の干潟などに与える影響が懸念され、多くの市民団体が反対の声をあげています。特に、公共事業にかかる費用が1000億円を超える見込みで、財政面への懸念が高まっています。

住民投票の実施

このような背景の中、1999年に徳島市で住民投票が実施されることが決定しました。投票日は2000年の1月23日となり、各派の意見が二分されました。可動堰化推進派は投票棄権を呼びかけ、反対派は「投票へ行こう」として市民の行動を呼びかけました。結果として、投票率は約55%に達し、開票が行われました。開票の結果、91.6%が可動堰化に反対する票を投じました。

この結果を受けて、徳島市長は可動堰化反対の姿勢に転じ、政権与党も公共事業の見直しを求めました。その後も可動堰化を推進する候補者の当選はなく、以降の知事選や市長選ではこの問題が影響を与えています。

総括

吉野川第十堰は、地域の水資源管理における重要な施設であり、その運命を巡る可動堰化問題は、今日の社会においても色濃く反映されています。環境保護と治水対策のバランスを取るための議論が進むなか、一つの河川施設が地域住民にとって何を意味するのかを再考する必要があります。今後の進展に注目が集まります。

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