吉野水分神社

吉野水分神社について

吉野水分神社（よしのみくまりじんじゃ）は、奈良県吉野郡吉野町の子守地区に所在します。この神社は、別名を子守宮と称し、2004年にはユネスコの世界遺産に登録された『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部としても知られています。

歴史

吉野水分神社の創建年代は明らかではありませんが、その最古の記録としては『続日本紀』に記されており、天皇が馬を奉納し雨を祈願した旨が述べられています。また、万葉集にも神に祈る詩が存在することから、古くから水分神が崇拝されてきたことがわかります。もともとこの神社は、吉野山の最奥部、青根ヶ峰の山頂に位置していたとされ、806年頃に現在の場所に移されました。延喜式神名帳には「吉野水分神社」として名が記載されており、社家は前防家によるものです。

吉野水分神社は、葛城水分神社や都祁水分神社と並ぶ大和国四所水分社の一つで、古くから水の神を祀ってきました。室町時代から続く御田植神事が行われることでも知られていますが、吉野の地には水田がなく、そのため「水分」の神がここに祀られているのです。また、「みくまり」が「みこもり」と呼ばれるようになり、平安時代からは「子守明神」として信仰を集めました。特に藤原道長からも子授けの神として崇敬され、彼の日記にも言及されています。

社殿について

現在の社殿は豊臣秀頼によって慶長10年（1605年）に再建され、桃山建築様式の華麗さを伝えています。そのため世代を超えて多くの人々に信仰され続けています。社殿の大規模な構造には本殿や拝殿、幣殿が含まれ、重要文化財にも指定されています。ただし、その再建年については文献によって異なることがあり、混淆が存在します。

社殿には天之水分大神を主祭神として祀っており、水の分配を司る重要な神とされています。また、右殿と左殿には様々な配祀神が祭られています。

御田植神事

毎年4月3日に行われる「御田植神事」では五穀豊穣を祈願し、約700年前から続く伝統行事として文化財にも指定されています。この神事は祭りの形式で行われ、田を耕す様子を模した演技が展開されます。翁舞が神の顕現を演出し、そのために特別な役割を担う人々が存在します。祭りはコミュニティの結束を深め、地域の人々にとって重要なイベントとなっています。

文化財の指定

吉野水分神社には国宝や重要文化財がいくつも存在します。中でも、木造玉依姫命坐像は1956年に国宝として指定され、その彫刻は神像の中でも特異に美しいものとして評価されています。また、本殿や拝殿、楼門なども重要文化財として登録されています。

アクセスと拝観

吉野水分神社へのアクセスは、近鉄吉野線の吉野駅からロープウェイで「吉野山」下車後、徒歩約1時間30分の距離です。車の場合でも駐車スペースはありますが、道幅が狭いため注意が必要です。拝観は無料で、8時から16時まで開放されていますが、春先は特に混雑が予想されます。

吉野水分神社はその歴史と文化が今なお息づく場所であり、訪れる人々にとって心の拠り所となる神社です。その神聖な雰囲気と美しい景観は、多くの信仰を集め続けています。

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