名古屋コーチン

名古屋コーチン：地鶏の王様

名古屋コーチンは、愛知県を代表する特産鶏であり、卵肉兼用種として知られています。かつては「名古屋種」とも呼ばれていましたが、現在も「名古屋コーチン」の名で広く親しまれています。1905年には、日本で初めて実用鶏種として認定されました。

概要

名古屋コーチンは、明治時代初期に愛知県で誕生しました。地鶏肉の日本農林規格においても、在来種として認定されています。現在市場に出回っている肉や卵のほとんどは、愛知県畜産総合センター種鶏場から供給される種鶏から生まれたものです。愛知県とその近隣県を中心に飼育され、その肉と卵は高級食材として珍重されています。卵をよく産み、肉も美味であることから、「卵肉兼用種」に分類されています。比内地鶏、さつま地鶏と並び、日本三大地鶏の一つとして名を馳せています。

歴史

愛知県の養鶏は、江戸時代末期に尾張藩士が鶏を飼育したのが始まりとされています。明治時代以降、産業として定着し、発展を遂げました。その歴史とともに歩んできたのが名古屋コーチンです。

1882年頃、海部壮平・正秀兄弟が、中国から入手したバフコーチンと岐阜地鶏を交配させ、名古屋コーチンが誕生しました。肉質、産卵能力に優れ、強健で温厚な性質から、瞬く間に評判となり、全国へと広まりました。1903年からは愛知県が育種改良を担い、1905年に日本家禽協会によって国内初の実用鶏種として認定されました。

その後、「名古屋種」と改称されましたが、現在も「名古屋コーチン」の名が広く使われています。1955年頃には年間100万羽以上が出荷され、養鶏業の振興に大きく貢献しました。しかし、1962年以降、外国産の種鶏が輸入されるようになると、大量生産に適した外国鶏へと移行し、名古屋コーチンは一時衰退しました。

1970年頃、消費者の間で「かしわ肉」を求める声が高まり、1973年から愛知県は産肉性向上のための改良に着手しました。1984年に「肉用名古屋コーチン」の供給を開始すると、グルメ志向と相まって生産羽数が急増し、再び脚光を浴びました。現在では、「地鶏の王様」として圧倒的な知名度と人気を誇っています。2000年からは、採卵を目的とした「卵用名古屋コーチン」の供給も開始されています。2016年には、3月10日が「名古屋コーチンの日」として認定されました。

普及組織

名古屋コーチン普及のため、様々な組織が活動しています。名古屋市農業センターは、養鶏農家や料理店等と協力し、名古屋種改良研究会を立ち上げました。1981年には名古屋コーチン普及協会が設立され、生産から販売までの組織作りを行ってきました。また、岩倉市でも名古屋コーチン振興組合が発足し、普及に取り組んでいます。

2007年には偽物問題が発生しましたが、2009年には名古屋コーチンブランドを守るため、一般社団法人名古屋コーチン協会が設立されました。協会は、消費者が安心して鶏卵肉を購入できるよう、信頼確保と普及促進に努めています。

生産体制

愛知県では、農業総合試験場畜産研究部が育種改良を、愛知県畜産総合センター種鶏場が種鶏の供給を分担しています。供給された種鶏をもとに、民間孵化場が優良ひなを生産し、生産者に供給しています。生産された肉や卵は、販売店や加工食品、専門料理店などを通じて消費者に届けられます。

特徴

性格と外貌

名古屋コーチンは、穏やかな性格で飼育しやすいのが特徴です。かつては就巣性が強く、採卵効率が低下することがありましたが、改良により改善されています。脚色は名古屋在来鶏から受け継いだ鉛色（灰色）で、体型はバフコーチンの影響を受け、日本の地鶏の中でも大型です。かつては脚毛がありましたが、改良により除去されています。

鶏肉

名古屋コーチンの出荷日齢は120～150日と、ブロイラーに比べて長期飼育されます。そのため、肉にはコクのある旨みと締まった歯ごたえがあり、奥深い味わいが楽しめます。また、純血を守り続けているため、昔ながらの地鶏の味を堪能できます。名古屋コーチンを使った郷土料理としては「ひきずり」が有名で、その他にも串焼きや鍋物、刺身など、様々な料理に用いられます。

鶏卵

名古屋コーチンの卵は、桜色の卵殻が特徴です。やや小ぶりながらも、卵黄の割合が高く、濃厚で粘りのある舌触りが楽しめます。卵黄の色も濃く、味が濃厚です。厚焼き卵は形がしっかりし、歯ごたえのある食感が味わえます。親子丼やだし巻き卵、プリンやカステラなど、様々な料理やお菓子に利用されています。



名古屋コーチンは、その美味しさと歴史、そして関係者の努力によって、現代でも「地鶏の王様」として君臨し続けています。

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