名古屋市交通局5000形電車

名古屋市交通局5000形電車は、名古屋市営地下鉄の通勤形車両として、1980年（昭和55年）に登場し、2015年（平成27年）まで主に東山線で運用された形式です。

概要

東山線の車両における冷房化を推進するとともに、旧型車両であった100形や200形を置き換えるために開発されました。まず試作車として6両編成1本が製造され、その後に量産車として6両編成22本、合計132両が増備されました。これにより、総勢138両が名古屋市営地下鉄に在籍しました。

特徴

5000形は、名古屋市営地下鉄の車両設計において、いくつかの新しい試みを導入した形式です。

車体: 名古屋市営地下鉄の車両として初めて、アルミニウム合金製の車体が採用されました。軽量化とメンテナンス性の向上が図られています。
編成構成: 制御付随車（運転台がありながら主電動機を持たない車両）が編成の両端に配される構成となりました。
主要機器: 標準軌かつ第三軌条方式の地下鉄車両として、国内で初めて本格的な冷房装置と回生ブレーキを搭載しました。主制御器には電機子チョッパ制御を採用し、省エネルギー運転を可能にしました。
窓: 車窓は固定窓式が採用されました。
内装: 車内には荷物棚が設置され、座席の表地（モケット）には赤橙色が用いられました。
デザイン: 前面は平面的な「切妻形」を基本としつつ、わずかに傾斜がつけられています。非常扉は向かって右側（助士側）に寄せられた非対称の意匠が特徴的で、前面上部の窓を一体化させたデザインは、後の250形や5050形にも受け継がれました。
車番: 車両番号の表記は、本形式以降、それまでのローマン体からゴシック体に変更されました。
機器配置: 車体断面が小さいため、制御装置などの主要な電気機器は編成全体に分散して搭載されました。これにより、編成を3両で1ユニットとして機器を搭載する方式が採用されています。
冷房装置: 集約分散式の冷房装置を各車両に2台搭載し、1両あたりの能力は29.07 kW（25,000kcal/h）相当でした。冷房用のダクト配置の関係で、車端部は天井が低くなる構造となっていました。
車体帯: 東山線の車両としては初めて、車両の側面に路線のイメージカラーである黄色の帯が巻かれました。

編成

基本的な編成は6両編成でした。運用上の特徴として、藤が丘方面の先頭から4両目にあたる5400形は、平日ダイヤにおいて始発から終電まで女性専用車両として運用されました。

終焉

東山線では、本形式と後継の5050形を合わせて最大で50編成が運用されていましたが、予備編成数の見直しによる減車が行われました。特に、2004年（平成16年）3月27日の保安装置（打子式ATSからCS-ATC）切り替えに伴い、車内信号式ATCへの対応改造が見送られた5101・5102編成が最初に廃車されました。

車体構造は比較的新しいアルミニウム合金製でしたが、製造から約25年が経過し、走行時の横揺れや、特に電気機器の老朽化が進行していました。また、後年設置が計画されたホーム柵の制御装置を搭載するためのスペースを車内に確保することが困難であったことも、廃車を後押しする要因となりました。

後継形式であるN1000形の導入が進むにつれて、2008年（平成20年）3月26日以降、5000形は順次廃車されていきました。そして、2015年8月28日をもって営業運転を終了し、同年8月30日付けで残存していた全車が廃車され、形式消滅となりました。

海外譲渡

全ての車両が解体されたわけではありません。2013年（平成25年）7月には、5103、5112、5115、5121、5122の計5編成がアルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄へ譲渡されました。これらの車両は、現地の電力供給方式に合わせて第三軌条方式から架線集電方式への改造が施され、海を渡った地で新たな活躍を続けています。

営業区間

名古屋市営地下鉄東山線の高畑 - 藤が丘間で運用されました。

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