名古屋市交通局800形電車 (軌道)

800形電車の概要

名古屋市交通局（名古屋市電）が保有していた800形電車は、1950年代に登場した画期的な電車です。この電車は、路面電車の近代化を図る一環として日本車輌製造によって製造されました。1956年7月に試験的に生産されたNSL-1形は、同年9月から営業運転を開始し、港車庫に所属しました。

車体の設計と特長

800形の設計において、メーカー形式のNSL-1が示すように、構体構造が大幅に簡素化され、製造コストを軽減することに成功しました。さらに、高速運転にも対応できる軽量設計がなされ、自重は約11トンと、同時期に製造された他の電車と比べて大幅に軽く、製造コストも817万円に抑えられました。

車体の構造には「準張殻構造」が採用されており、側板にも負荷を分散させることにより全体を軽量化しています。外板にはリブがプレス加工され、車体剛性を確保しつつ省スペース化が図られました。前面窓は大型2枚窓のデザインを採用し、先端幅を狭めることで、流線型の印象を強調しています。また、室内灯には蛍光灯が使用されるなど、当時の車両としては珍しい仕様となっています。

主な機器

800形の主電動機は100kW級のトロリーバス用のもので、中央の床下に配置され、ユニバーサルジョイントによって第1・4軸を駆動します。乗越カルダン駆動方式が採用されており、軽量設計の台車には弾性車輪が使用されています。制御機器にはワンハンドルマスコンが導入されており、技術革新が色濃く反映されています。ただし、ブレーキ装置は従来のドラムブレーキと発電制動併用で、特に目新しさはありませんでした。

増備と展示

800形は初年度に1両が追加され、その後1957年と1958年に各5両が新たに投入され、総数は12両に達しました。なお、各年度ごとに台車の設計が若干異なります。1958年5月には大井工場で開催されたECAFE鉄道展に出展され、当時の新型車両とともに日本の鉄道技術をアピールしました。

運用状況とその後

全車両は港車庫に所属し、加速力や最高速度では好評を得ていましたが、軽量化による問題も少なくありませんでした。特に折り返し地点での脱線事故や、夏場の暑さ、ドラムブレーキの水入りによる制動力低下が問題視されました。また、新機構により故障も多発し、稼働率は高くなかったのが実情です。

1969年には路面電車の撤去が始まり、港車庫が廃止される際に800形も全車が運用を終了。最終的には、全てが海中に沈められる運命を辿りました。

諸元

• - 車長：12717mm
• - 車幅：2416mm
• - 車高：3850mm
• - 自重：11.2t
• - 台車：NS51・52・53形
• - 電動機：100kW×1

800形は名古屋市の交通史の中で特異な存在であり、その革新的な設計と技術は、後の電車の発展に影響を与えるものでした。

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