名古屋瓦斯

名古屋瓦斯株式会社の歴史

名古屋瓦斯株式会社（なごやガスかぶしきがいしゃ）は、愛知県名古屋市で1910年代から1920年代にわたり都市ガスを供給する事業者であり、後に東邦ガスの前身となりました。この企業は明治末期から大正初期にかけて設立され、都市のインフラとして重要な役割を果たしました。

設立の背景

日本でのガス事業の開業は、1872年に横浜で始まりました。名古屋においても、日清戦争後の起業ブームを受けて、ガス事業を始めたいという動きが活発化しました。1896年、実業家ら13名が「愛知瓦斯株式会社」として許認可申請を行いました。しかし、経済状況の悪化に伴い、最初の計画は頓挫します。

その後、日露戦争を経て、再びガス事業の計画が立てられることになりました。山田才吉と服部小十郎の両者の動きが交わる形で、名古屋瓦斯株式会社が設立される運びとなりました。

開業までの道のり

名古屋瓦斯の設立準備は順調に進み、1907年には正式にガス事業の許可を取得します。最初のガス工場は名古屋市外の御器所村に設置され、技術者岡本桜の指導のもとで建設が進められました。1907年10月には営業を開始し、名古屋市内に都市ガスが供給されることになりました。

開業当初はガス灯が主な用途であり、ガス需要家数は729戸からスタートし、徐々に拡大していきます。当時は電気が普及していなかったため、ガス灯は重要な照明手段として位置付けられました。

ガス灯と電灯の競争

名古屋瓦斯の成長は目覚ましく、1914年までに3万戸を超える需要家数に達しました。しかし、名古屋電灯との競争が激化し、ガス需要の維持に苦慮します。1912年には電灯料金の引き下げが行われ、名古屋瓦斯も対抗策を取る必要に迫られました。

その中で、ガス灯の優位性が問われることがあり、需要の変化に対応しようとしましたが、経済情勢や電灯の技術革新により、ガス灯の人気は徐々に下降していきます。1914年には名古屋電灯との間で競争行為を避ける合意を結び、ガス需要の開拓へとシフトしました。

大正時代の経営難

第一次世界大戦の影響を受け、大戦景気に乗じて料金の引き下げを実施しましたが、戦後は経営が厳しくなり、物価の高騰が経営を圧迫しました。特に石炭の価格が上昇し、ガス事業が影響を受ける状況が続きます。1917年以降、料金の値上げを余儀なくされました。

その後、1921年には名古屋市が市域拡大を行い、ガス事業の必要性が増大しました。しかし、経営環境は依然として安定せず、1922年に名古屋電灯との合併が検討されることになります。

東邦ガスへの合併

名古屋瓦斯は1922年に関西電気と合併し、同時に新たに東邦瓦斯株式会社が設立されました。合併によって名古屋瓦斯は解散の道を歩むことになりますが、東邦ガスとして新たなスタートを切ります。これにより名古屋のガス供給体制は一新され、持続的な成長の基盤を整えることとなりました。

結論

名古屋瓦斯株式会社は、短期間に急成長を遂げながらも、経済環境に左右されて多くの試練を経験しました。電灯との競争や戦後の不況局面を経て、最終的に東邦ガスに更生されることで、新たな時代を迎えることとなりました。この様子は、成功と挫折の両面を持つ都市ガス事業の発展を象徴するものです。

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