名古屋能楽堂

名古屋能楽堂：伝統芸能と文化交流の拠点

名古屋城の威容を間近に望む名古屋市中区三の丸に佇む名古屋能楽堂は、1997年4月の開館以来、能楽をはじめとする日本の伝統芸能の振興と文化交流に大きく貢献しています。総木曽檜造りの堂々たる能舞台と、最大630席を誇る客席は、地方自治体所有の能楽堂としては日本最大級の規模を誇り、多くの観客を魅了しています。

能楽堂内には、公演の解説を日本語と英語で提供するイヤホンガイド設備が完備されており、初心者から熟練者まで、より深く能楽の世界を楽しむことができるよう配慮されています。能楽の公演を年間10回程度開催するほか、多くの団体による能・狂言の上演が毎月行われており、伝統芸能の普及に力を入れています。

さらに、名古屋能楽堂は、将棋のタイトル戦、王位戦の対局会場としても利用されており、伝統芸能の殿堂としてだけでなく、現代社会にも深く根付いた存在となっています。1997年度には、その建築デザインの素晴らしさから第5回愛知まちなみ建築賞を受賞するなど、建築物としても高い評価を受けています。

能舞台の鏡板は、若松図と老松図の2種類があり、毎年入れ替えられるという特徴があります。これは、1997年の開館時に寄贈された杉本健吉作の若松図が、伝統的な老松図とは異なる画風であったことから物議を醸したことに端を発します。この問題に対し、「名古屋能楽堂に老松の鏡板を寄贈する会」が設立され、松野秀世氏に老松図の制作を委嘱。結果、両方の鏡板を年替わりで展示することで、伝統と革新の調和が図られることとなりました。

建物の構造は、RC造一部S造、地下1階地上1階建てで、敷地面積は21,972.87平方メートル、建築面積は4,554.25平方メートル、延床面積は5,610.62平方メートルに及びます。能舞台以外にも、展示室では能楽に関する資料や映像などを展示しており、来場者は能楽の歴史や文化について学ぶことができます。研修会議室（定員120名）や稽古室（本舞台と同規模）なども備え、能楽の普及・発展のための教育や練習の場としても活用されています。楽屋は6室あり、出演者の快適性を考慮した設計となっています。

なお、2021年3月31日には、能楽堂内にあった料亭「大森」が閉店しました。この料亭は、1948年に西区の浄心交差点にあった公設市場の天ぷら店を起源とする歴史あるお店でした。

名古屋能楽堂は、単なる公演会場にとどまらず、伝統芸能の継承と発展、そして文化交流の拠点としての役割を担い、多くの人々に愛されています。アクセスは、名古屋市営地下鉄鶴舞線浅間町駅、名城線名古屋城駅から徒歩圏内、または市バスでもアクセス可能です。無料駐車場として、名古屋城正門駐車場（319台）と名古屋城東門駐車場（202台）が利用できます。見学時間は午前9時から午後5時まで（年末年始を除く）、展示室の見学は無料です。名古屋の文化に触れたい方は、ぜひ一度訪れてみてください。

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