名古屋鉄道トク3号電車

名古屋鉄道トク3号電車の歴史

名古屋鉄道の前身、旧・名古屋鉄道は1927年にトク3号電車を導入しました。この電車は、貴賓車として運用されることを目的に設計され、特にその美しい外観と高い工作精度が評価されました。導入から間もなくして、トク3号は昭和天皇のお召し列車として利用され、名古屋から犬山へ向かう行幸の際に非常に重要な役割を果たしました。この出来事は、地方私鉄利用の先駆けとなり、歴史的な転換点ともいえます。

導入経緯

旧・名古屋鉄道、当時は名古屋電気鉄道と呼ばれていましたが、1913年に初めて貴賓車トク1およびトク2を導入しました。その後、トク1が焼失した後、トク3の導入計画が立てられました。設計は1926年に開始され、木造車体ながら、優雅なデザインと様々な装備が特徴です。トク3号は、欧米の貴賓車を参考にしながら設計され、特別な仕様が施されました。

車体と内装の特徴

トク3は全長13,894mm、全幅2,438mmの木造車体を持ち、両運転台構造が採用されています。外観は、金色の装飾が施され、特別感を醸し出しています。特に、窓の配置は工夫されており、乗客が美しい風景を楽しめるようになっています。内装には独立したソファーが配置されており、貴賓室としての機能を十分に果たす一方、便所と洗面所も設置されていました。

お召し列車運行の実績

トク3号は、導入から約半年後の1927年11月にお召し列車として運行されました。この際、昭和天皇が名古屋を訪れたことで、トク3号はその乗用車両として運用されました。この特別な運行には徹底した整備が施され、記録的な運行となりました。このお召し列車の成功により、名古屋鉄道の名声は高まり、社史にも「破格の栄光に浴した」と記されています。

戦後の変遷と一般車両への改造

戦後、名古屋鉄道は需要の高まりと共に、輸送力の強化を図るため、トク3号を一般車両への改造を決定しました。1947年には、一般用車両として復籍し、形式および記号番号をモ680形681に改めました。この改造により、木造車体のままであったトク3号は、現代のニーズに応じたデザインへと生まれ変わりました。その後、1954年には豊橋鉄道に移籍し、名鉄での運用を離れることとなります。

豊橋鉄道での運用

豊橋鉄道においても、トク3号は新たな役割を担い、改良が施されました。運用にあたっては、座席数の増加や乗り心地の改善が重点的に行われ、様々な改良が施されました。車両の形式称号も改訂され、新たな時代を迎えることとなりました。

トク3号の最終的な運命

結局、トク3号は1969年に除籍され、解体されることになりましたが、その歩みは名古屋鉄道の歴史の中で特別な意味を持ち続けています。トク3号が経た数奇な運命とその影響は、今なお鉄道ファンや歴史愛好者の間で語り継がれています。

名古屋鉄道のトク3号電車は、歴史的な価値を持つ貴重な存在であり、その運行実績は今なお評価され続けています。

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