名宝会館

名宝会館：名古屋の映画史を彩った劇場

名宝会館は、1935年（昭和10年）11月3日に「名古屋宝塚劇場」として開業し、2002年（平成14年）12月1日に閉館した、かつて名古屋市中区栄一丁目に存在した東宝系の映画館（名宝劇場、名宝スカラ座、名宝シネマ）の総称です。

歴史

開業から戦前

当初は宝塚少女歌劇などの実演と映画の上映を二本立てで行い、観客定員数は1,994席を誇りました。館内にはレストラン「名宝グリル」やアイススケートリンク、屋上庭園なども設けられ、娯楽の中心地として賑わいました。1938年（昭和13年）には改装を経て「名宝会館」となり、1940年（昭和15年）には「名宝文化映画劇場」と改称されました。

戦後の復興と映画の黄金期

終戦後には、二世西川鯉三郎が主宰する舞踊公演『名古屋をどり』の旗揚げ公演が行われたり、並木路子主演の映画が上映されたりと、文化の発信地としての役割も担いました。また、1951年（昭和26年）には、中部日本放送の開局記念番組が生放送されるなど、メディアとの連携も深めました。

1954年（昭和29年）には「なごや東宝」に改称し、東宝邦画の封切館として新たなスタートを切りました。1955年（昭和30年）には増築が行われ、洋画ロードショー館「名宝スカラ座」が開館。アイススケートリンクはダンスホール「ムーンリバー」に改築されました。同時に「名宝文化」がATG専門館として再開し、ニュース映画専門館「名宝ニュース劇場」もオープン。「名宝会館」という総称が与えられ、名鉄東宝と共に愛知県内東宝系のチェーンマスターとして存在感を示しました。

多様化する映画のニーズに応えて

1969年（昭和44年）には大規模な改築工事が行われ、名古屋宝塚劇場がなごや東宝を吸収し、東宝邦画系封切館として再オープン。名宝文化は名宝劇場と同じ階に移動し、3階には洋画ロードショー館「名宝シネマ」が開館しました。1972年（昭和47年）には名宝文化が閉館し、名宝会館は3館体制でリニューアルオープンしました。

閉館へ

『ゴッドファーザー』、『スター・ウォーズ』、『エイリアン』、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『愛と追憶の日々』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『トップガン』、『ジュラシック・パーク』、『インデペンデンス・デイ』、『タイタニック』、『日本沈没』、山口百恵・三浦友和主演シリーズ、『ドラえもん』シリーズ、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』など数々の大ヒット作品を上映し、多くの観客を魅了しました。しかし、1990年代半ばから近隣のシネコンに押され始め、建物の老朽化も進んだため、2002年（平成14年）12月1日に67年間の歴史に幕を閉じました。閉館後、建物は解体され、跡地には「名古屋東宝ビル」が竣工しました。

各館の特徴

名宝劇場: 東宝邦画系作品を上映。定員946人。
名宝スカラ座: 大作の東宝洋画系作品を上映。定員982人。
* 名宝シネマ: 特徴的な洋画と邦画を上映。定員168人。

名宝会館は、時代の変化とともに姿を変えながらも、名古屋の映画文化を支え続けた重要な存在でした。その歴史は、映画ファンにとって忘れられない記憶として今も語り継がれています。

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