並木路子

並木路子：戦後の歌謡界を彩った歌姫の生涯

並木路子（1921年-2001年）は、日本の歌手として戦前から戦後にかけて活躍し、国民的な人気を博しました。本名は南郷庸子、旧姓は小林。東京浅草生まれで、幼少期を台湾で過ごしました。

松竹歌劇団から映画界へ

1936年、並木路子は松竹少女歌劇学校に入学。同期の仲間には、後に著名な女優や芸能関係者となった面々が名を連ねています。1937年には浅草国際劇場で初舞台を踏みます。その後、松竹歌劇団の娘役スターとして活躍し、数々の舞台を成功させました。

転機となったのは、1945年の松竹映画『そよかぜ』への主演です。同映画の主題歌・挿入歌として歌われた「リンゴの唄」は、戦後の混乱期において爆発的な人気を呼び、彼女の代表曲として、日本歌謡史に燦然と輝く一曲となりました。この曲は、NHK紅白音楽試合（現・NHK紅白歌合戦の前身）にも出演するほどの人気ぶりでした。しかし、後の紅白歌合戦には出演していません。

波乱万丈の人生と「リンゴの唄」

並木路子の芸名は、ミス・コロムビアのキャンペーン「並木の雨」と「並木の路に…」という歌詞の一節から名付けられました。しかし、彼女の生涯は華やかな舞台の裏で、多くの苦難を経験しています。東京大空襲では母親を亡くし、自身も負傷。兄弟や初恋の人も戦争で失うなど、大きな悲しみを経験しました。

「リンゴの唄」は、霧島昇とのデュエットとしても知られていますが、これはレコーディング当日の偶然によるもの。「リンゴの唄」は、戦後の日本人の心に深く響き、世代を超えて愛唱されています。しかし歌謡曲の人気投票では意外にも上位に食い込めず、ある文筆家は「焼け跡のイメージと結びつきすぎているからではないか」と分析しています。

晩年とその後

1955年には東宝の宣伝プロデューサーと結婚、1961年には長男を出産。1999年には勲四等瑞宝章を受章しました。晩年まで精力的に活動を続け、死去した翌日も仕事の予定が入っていたほどでした。

並木路子は2001年、自宅で入浴中に心筋梗塞のため急死しました。享年79。彼女の歌声は、日本の歌謡史に永遠に刻み込まれるでしょう。

代表曲と出演作品

並木路子の代表曲には、「リンゴの唄」の他に、「世界隣組」「可愛いスイートピー」「東京ルンバ」など、数多くのヒット曲が挙げられます。「リンゴの唄」は彼女の大切な財産でしたが、本人はリンゴがあまり好きではなかったという逸話も残っています。

映画出演作品も多数あり、『そよかぜ』を始め、『グランドショウ1946年』『仮面の街』『弥次喜多凸凹道中』など、幅広い作品に出演しています。

人との繋がり

並木路子は、コロムビアレコードの所属歌手から「小姐」と呼ばれ、慕われていました。また、二葉あき子の熱烈なファンであり、親交も深かったと言われています。

まとめ

並木路子の生涯は、華やかな舞台と、戦争による悲劇、そして数々のヒット曲によって彩られています。「リンゴの唄」は、時代を超えて愛される名曲であり、並木路子という歌手は、日本の歌謡史に大きな足跡を残しました。彼女の歌声は、これからも多くの人々の心に響き続けることでしょう。

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