名張藤堂家

名張藤堂家の歴史

名張藤堂家（なばりとうどうけ）は、藤堂氏の庶流に位置づけられる武家であり、江戸時代には津藩の一門として重きをなしていました。名張藤堂家の始まりは、藤堂高虎の養子である藤堂高吉を祖とし、その後の家系は高吉の子孫によって引き継がれていきました。初期には宮内家とも通称され、伝統的な武士の家系として幕末まで続きました。

江戸時代初期、高虎は実子を持たず、養子の高吉を後継者に考えていましたが、慶長6年（1601年）に実子の高次が生まれたことで、その計画は消えます。高吉は伊予国今治の城主となり、寛永7年（1630年）の高虎の死後は、実子の高次の家臣として仕官する道を選びました。

その後、高次は寛永9年（1632年）に伊勢国に2万石で移封され、その後さらに伊賀国名張に移されます。この動きは、高次が高吉を危険視し、冷遇した結果とも言われています。その後の数十年にわたり、名張藤堂家と本家との対立関係は続きました。

1734年（享保19年）、当主の藤堂長熙は、丹羽家を通じて幕府に独立の働きかけを行い、組織的な取り計らいを進めましたが、これが露見したことで幕府の干渉を受け、一触即発の事態に発展しました。ついにはその信任を受けていた家臣たちが切腹を選ぶという事態にまで至りました。この騒動以降、名張藤堂家も本家から厳しく監視されることとなり、当主に「殿様」と称することすら禁じられるようになりました。

19世紀に入り、11代当主の高節の時代を迎え、名張藤堂家は明治維新を経験します。明治15年、16年ごろに作成された『旧藩壱万石以上家臣家産・職業・貧富取調書』によれば、高節は士族としての立場を維持していましたが、経済状況が改善する中で明治39年に高成が男爵に叙されることとなりました。戦後、名張藤堂男爵家の邸宅は東京の中野区にあり、子孫も現在東京に住んでいます。

名張藤堂家の歴代当主は、藤堂高吉を始めとして長正、長守、長源、長熙、長美、長旧、長教、長徳、そして高美、高節、高成と続いてきました。その中で、武士としての役割を果たしながらも、次第に時代の変化とともに位置づけは変わっていきました。

名張陣屋は、名張市内に存在した陣屋で、初代高吉が筑井氏の家臣の旧邸跡に構えたものです。この陣屋は1710年（宝永7年）の大火で焼失し、その後再建されました。名張の町の発展に寄与した高吉の姿勢が、地元の発展にも影響を与えたのです。名張藤堂家の屋敷は現在でも一部が残り、貴重な文化財として指定されています。

なお、名張藤堂家の歴史は、ただの武家の系譜にとどまらず、幕末から明治にかけての日本社会の変容を反映するものでもあります。このように名張藤堂家は、時代背景や社会の変動にあわせてその運命を変えてきた、歴史的な意義を持つ一族なのです。

もう一度検索