名探偵登場

名探偵登場：豪華キャストが織りなす、予測不能なミステリコメディ

1976年公開のアメリカ映画『名探偵登場』（原題：Murder by Death）は、名探偵をパロディ化したユニークなミステリコメディです。エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、サム・スペードといった、ミステリ史上に名を刻む架空の名探偵たちが、コミカルに描かれる点が大きな魅力となっています。ストーリーは、『そして誰もいなくなった』を彷彿とさせるクローズド・サークル形式を採用。予測不能な展開と、豪華なオールスターキャストが織りなす、笑いとスリルの詰まった作品です。

謎の大富豪が仕掛けた、命懸けの殺人ゲーム

物語は、ミステリマニアである謎の大富豪、ライオネル・トウェインが、自身の屋敷に世界中から著名な5人の名探偵とその助手たちを招待するところから始まります。トウェインは、彼らに奇妙なゲームを提案します。「今夜12時、この中の誰かが殺される。犯人もこの中から一人だ。正解者には100万ドルの賞金！」

オカルトめいた仕掛けが施された屋敷で、名探偵たちは豪華な晩餐を楽しみながら、殺人トリックの謎解きに挑みます。しかし、深夜12時、トウェインは予告通りに殺害されてしまいます。死体は背中を12か所刺されており、『オリエント急行殺人事件』へのオマージュを感じさせる演出です。

名探偵たちの迷推理と、意外な真犯人

参加者全員が名探偵とその同伴者という、まさに「名探偵だらけ」の状況の中、それぞれが独自の推理を披露していきます。予想外の展開が連続し、観客は最後まで真犯人を予測することができません。名探偵たちが繰り広げる「迷推理」の数々は、笑いを誘うとともに、ミステリの面白さを改めて感じさせてくれます。しかし、最終的に事件の真相を解き明かすのは、意外な人物でした。

制作秘話：シャーロック・ホームズのカットと、スターたちの思惑

実は、当初のバージョンでは、終盤にシャーロック・ホームズとワトソンが登場し、他の名探偵たちの推理を嘲笑しながら、真相を明かすという展開でした。しかし、オールスターキャストの中で無名俳優が重要な役割を担うことに、スターたちが反発。再撮影が行われ、ホームズとワトソンのシーンはカットされました。代わりに、トルーマン・カポーティ演じるトウェインが、事件の真相を明らかにする形に変更されました。ホームズとワトソンが登場するバージョンは、一部地域でのみ公開された幻のバージョンとなっています。

ノベライズ版と、映画との違い

映画公開に合わせて刊行されたノベライズ版は、ニール・サイモン名義となっていますが、実際にはゴーテ警部シリーズの作家、H・R・F・キーティングが執筆を担当。映画と同じストーリー展開ですが、執事の名前や、ラストシーンなどが一部変更されています。特にラストシーンは、映画のようにどんでん返しはなく、名探偵たちに犯人が賞賛されるという、穏やかな幕切れとなっています。

姉妹編『名探偵再登場』と、その他のトリビア

1978年には、本作の監督や脚本、キャストの一部が共通する姉妹編『名探偵再登場』（原題：The Cheap Detective）が公開されました。しかし、本作がクローズド・サークル形式のミステリ作品のパロディであるのに対し、『名探偵再登場』は、『マルタの鷹』や『カサブランカ』を題材としたハードボイルド作品のパロディとなっています。

その他、本作には多くの興味深いエピソードが残されています。アレック・ギネスが本作の撮影中に『スター・ウォーズ』の脚本を受け取っていたこと、シドニー・ワン役の第一候補がオーソン・ウェルズであったこと、トウェイン邸のドアベルの音声が映画『キング・コング』のものだったことなど、撮影秘話も魅力の一つです。また、映画の舞台は1970年代ですが、1930～40年代の雰囲気を巧みに演出している点も注目です。

まとめ

『名探偵登場』は、豪華なキャスト、予測不能な展開、そしてミステリとコメディの絶妙な融合によって、多くの観客を魅了した傑作です。ミステリファンはもちろん、そうでない人にも、その魅力を存分に味わえる作品と言えるでしょう。一度ご覧になって、その面白さを体験してみてください。

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