名鉄スカーレット

名鉄スカーレット

名鉄スカーレット（めいてつスカーレット）は、名古屋鉄道が使用する鉄道車両の独特な塗色の名称です。この色はスカーレットレッドとも呼ばれ、マンセル値である5.7R 3.9/14.9に由来しています。日本国有鉄道が定めた赤11号やJIS慣用色のスカーレットとは、色合いが似ているものの、赤11号のマンセル値7.5R 4.3/13.5と比べると、若干赤紫に近いのが特徴です。

名鉄スカーレットは1961年に登場した7000系「パノラマカー」の専用色として採用され、1970年代中頃からは名鉄全体の標準塗装として広く使用されるようになりました。これにより、「名鉄＝赤い電車」という印象が確立されました。

名鉄スカーレットの歴史

名鉄スカーレットは、7000系「パノラマカー」の設計の際に考案された色です。その考案者は名古屋市に住む洋画家の杉本健吉とも言われていますが、鉄道研究家の清水武は、スカーレット色のアイデアは名鉄車両部からの提案であったと主張しています。杉本の案には「若草色」という薄緑色も存在し、この2つの案が並行して稟議されましたが、最終的にスカーレットが選ばれました。杉本自身も7000系の完成を見て、その美しさを評価しました。

初めて7000系に塗布されたスカーレット色は、当初日本国内では調達できなかったため、フランスから塗料を輸入して使用されました。後に国産の塗料が生産されるようになり、この色は国内製品に切り替わりました。

名鉄スカーレットは、7000系だけでなく、1968年からは「SR車」と呼ばれるカルダン駆動車の各形式にも順次採用され、広がりました。1975年の3880系導入にあたっては、名鉄の車両の塗装を統一する方針が打ち立てられ、1979年までに大部分の車両がこのスカーレット色で塗装されることとなりました。1980年代中頃からは、8800系や1000系など、優等列車用の車両にはアイボリーやホワイト系の塗装が用いられるようになりましたが、帯色には名鉄スカーレットが引き続き使用されています。

2000年代に入ると、一般列車用の車両が普通鋼から無塗装ステンレス鋼製に改良された後でも、名鉄スカーレットは帯色として使われ続けています。また、2009年の時点で、中部国際空港へのアクセス特急「ミュースカイ」用の2000系は特別な青系の塗装が施されていますが、これは例外的なケースです。

まとめ

名鉄スカーレットは、名古屋鉄道の歴史と文化に深く根付いている色であり、その鮮やかな色合いは多くの人々に親しまれています。この塗色は、単なるデザイン以上に、名鉄のブランドアイデンティティの確立にも寄与しました。

もう一度検索