名鉄デキ800形電気機関車

名鉄デキ800形電気機関車の概要

名鉄デキ800形電気機関車は、名古屋鉄道が1944年に製造した直流用電気機関車で、架線電圧が1500Vの線区専用です。この機関車は、太平洋戦争中に貨物輸送が増加した結果として、急遽生産されることになりました。名古屋鉄道は、電車や電動貨車の余剰部品を有効活用し、デキ800形の設計と製造に取り掛かったのです。

デキ800形は、具体的には801号から803号の3両で構成され、それぞれに特色があります。これらの機関車は、鳴海工場で製造され、主に三河線などでの貨物輸送に使用されました。特筆すべきなのは、戦時中の資材不足の影響で、デキ800形の車体は木造で作られていた点です。また、モ1010形電車から流用した電装品や、主電動機（AEGのUSL323-B）など、他の車両から取り外された部品を多く使用しています。

特に801号は、他の2両と比較すると前部標識灯の位置やルーバーの形状が異なることが確認されており、個体の特性が感じられます。また、戦後には801号の主電動機がより性能の高いTDKの516-Eに変更されるなど、運用に適した改良も施されました。

しかし、戦時中の急造による様々な部品の劣悪な状態、さらに貨物扱い量の急激な減少により、この機関車たちの老朽化は避けられませんでした。晩年は、801号が新川工場入換専用機、802号が鳴海工場入換専用機、803号が築港線の客車を牽引する役割を担っていました。やがて、廃車の年月が到来し、803号が1960年に、801号は1965年、802号は1966年にそれぞれ使用を終えました。

名古屋鉄道は他にも戦時中に自社製造した電気機関車、デキ850形も存在します。この機関車は架線電圧が600Vの区間で使用されているため、デキ800形とは異なる用途で開発されました。また、7000系電車の新造時には、二階建運転台からの信号確認に課題があり、デキ800形の上に仮設運転台を設置して乗務員の訓練に活用されたというエピソードもあります。

名鉄デキ800形電気機関車は、名古屋鉄道の歴史における重要な一部を形成する存在であり、戦後の貨物輸送にも貢献したことがうかがえます。それぞれの車両が持っていた独自の歴史や役割を考えると、名鉄デキ800形は名古屋鉄道の中でも特異な位置づけを持つ機関車であったと言えるでしょう。

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