名鉄モ580形電車

名鉄モ580形電車章

名鉄モ580形電車は、名古屋鉄道（名鉄）が運行する路面電車として、1955年から1956年にかけて導入された車両です。この形式にはモ581からモ584までの4両が製造されており、主に岐阜市内線や美濃町線で稼働していました。しかし、1976年から1981年にかけて廃車が進み、残りの車両は豊橋鉄道に譲渡され、「モ3200形」として新たな運用に入ることとなりました。

製造背景

モ580形は、日本車輌製造によって製造されました。モ581とモ582は1955年3月に、モ583は1956年5月、そしてモ584が同年9月に竣工しました。これは戦後初の名鉄軌道線用車両の新造車であり、連続して製造されたモ570形の後継でもありました。

車両の構造

本形式は、長さ12.3メートル、幅2.236メートルの半鋼製ボギー車体を持っており、全高は集電装置の種類によって異なります。自重は16.0トンとなっており、前面は3枚の窓で構成され、側面窓は特殊な配置がされています。また、ノーシル・ノーヘッダーの構造で、中央の客用扉は片開き扉として設計されています。

塗装は初め、窓下の濃緑色と上部のクリーム色のツートンカラーで登場しましたが、1975年からは名鉄の新標準色であるスカーレットへと塗り替えられました。室内はロングシート形式の座席を採用しており、定員は80人となっています。

主要機器

モ580形は、台車に住友金属工業製のKS-40Jを搭載したモ581からモ583、そしてモ584には日本車輌製造製のNS-9が装備されていました。主電動機は神鋼電機製のMT-60Aで、各車両には2基が搭載されています。この駆動装置は吊り掛け方式を採用しており、制御装置の形式によって運用が変更されていました。

名鉄時代の運用

モ580形は岐阜市内線での運用を開始し、その後美濃町線へと転用されました。しかし、連接車の導入により余剰となり、1976年に廃車が始まります。残りの3両は一時的に美濃町線で使用された後、1980年に全て廃車となり、この形式は消滅しました。

豊橋鉄道への譲渡

名鉄での運用終了後、モ580形のうち3両は豊橋鉄道に譲渡され、「モ3200形」に改番されました。入線後はワンマン運転に対応するための改造が施され、さらには冷房装置も設置されています。1990年代からは全面広告車両としても運用され、多くのプロモーションに活用されました。

現在の状況

モ3201とモ3202は、他の形式との運用交代により営業運転を終了しました。現在もモ3203はイベント列車として登場し、地域のイベントで利用されることが多くなっています。

名鉄モ580形電車は、その歴史を通じて日本の路面電車文化の一翼を担っており、豊橋鉄道においてもなお存在感を示しています。

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