名鉄モ90形電車 (2代)

名鉄モ90形電車について

名鉄モ90形電車は、かつて名古屋鉄道に属していた路面電車の一形式で、戦後の車両不足という背景の中で名古屋市電から譲渡された中古車両です。そのルーツは、京都市電の狭軌1形（通称N電）にあります。この鉄道車両は、名鉄に引き継がれた際、乗務員の間で「本願寺」という愛称で親しまれていました。

歴史的背景

1945年7月、第二次世界大戦の終息を迎えつつあった日本では、岡崎市も空襲による壊滅的な被害を受けました。岡崎市内線に在籍していた11両の車両のうち、6両が焼失するという事態が発生しました。この深刻な車両不足を解消するために、名古屋市電から緊急に譲り受けられました。これらの電車は、木造二軸単車のダブルルーフ・オープンデッキ構造で、全車両が梅鉢鉄工所によって製造されています。

譲渡された当初は、京都市電時代の塗装が施されていましたが、その後名鉄の標準的な緑とクリームのツートンカラーに再塗装されました。その他の仕様については、京都時代のものがほぼそのまま引き継がれました。具体的には、台車はブリル21-Eが使用され、制動装置はハンドブレーキのみ、集電装置にはポールが搭載されていました。

名鉄での運用

名古屋市電としての在籍時には、京都市電時代の番号をそのまま名乗っていましたが、名鉄へ譲渡後しばらくの間は原番が継続されました。その後、モ90形（2代、番号90 - 94）に改称・改番されました。N電時代の車両番号は、N82、N90、N91、N98、N104でした。ただし、資料によってはN98がN85と記されることもあり、当時の情報が混乱していたことが伺えます。

1954年1月、名鉄はモ40形を岐阜市内線から岡崎市内線へ転属させたため、モ90形は全車廃車となります。比較的早い段階での車両の廃止が決定され、最終的に2両が岡崎市内の中学校に譲渡され、更衣室として利用されることとなりました。

文献、参考資料

この電車の歴史や詳細については、藤井建の『名鉄岡崎市内線 -岡崎市電ものがたり-』や、加藤久爾夫・渡辺肇の『私鉄車両めぐり 名古屋鉄道』などの資料が参考になります。また、清水武と田中義人の『名古屋鉄道車両史 上巻』、日本路面電車同好会名古屋支部の『路面電車と街並み 岐阜・岡崎・豊橋』なども充実した内容を提供しています。

このように名鉄モ90形電車は、名古屋鉄道の一時代を象徴する存在であり、戦後の復興期における重要な役割を果たしてきたと言えるでしょう。

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