君が見ていた夢を

君が見ていた夢を（きみがみていたゆめを）

那州雪絵による中編漫画作品。『花とゆめ』（白泉社）1990年17号・18号に掲載。

概要

長期連載『ここはグリーン・ウッド』の中断期間に執筆された前後編100ページの作品。サイコサスペンスというジャンルでありながら、ホラーやオカルトの要素、悪夢、他人への憧れや嫉妬といった人間模様をテーマにしています。作者自身も「ジャンルの判らないものを描いてしまった」と語るほど、多岐にわたる要素が織り込まれています。

雑誌掲載時のタイトルは『君が見ていた夢』でしたが、単行本収録の際に改題。さらに、当初は『月蝕』というタイトルが予定されていたものの、同タイトルの漫画が既に存在していたため、二度の改題を経て現在のタイトルとなりました。

当初は単独での単行本化、または他の中編との併録が予定されていましたが、様々な事情により『ここはグリーン・ウッド』9巻に収録されることになりました。その結果、『グリーン・ウッド』本編よりも本作のページ数が多くなるという珍しい現象が起きています。現在は「花とゆめコミックス」版の『ここはグリーン・ウッド』が絶版しており、入手が難しい作品となっています。

あらすじ

幼い頃、拓人と淳也は近所の「おまつり山」の祠を探検中に奇妙な突風に襲われます。5年後、淳也は拓人と同じ高校に入学しますが、優等生となった淳也と拓人の間には溝が生まれていました。拓人の妹・有生は、2人の関係を修復しようと奔走しますが、淳也の身に異変が起こり始めます。

淳也は最近、成績の低下や奇行が目立つようになっていました。当初は受験ノイローゼや養父母との関係が原因だとされていましたが、有生と拓人はそれぞれ原因を調べ始めます。有生は、淳也と同じ中学校出身の羽倉から、淳也が3年前に人殺しをしたという話を聞かされます。

期末テスト中、淳也が自らの手をシャープペンシルで突く事件が発生。拓人は淳也を助けようとしますが、再び突風に襲われます。拓人は異変の鍵が「おまつり山」にあることに気づき、山へと向かいます。一方、有生は淳也から「鬼が…」という言葉を聞き、羽倉から話を聞こうとしますが、羽倉は謎の突風に巻き込まれ死亡してしまいます。

拓人は自宅で淳也の養母から、3年前に事故死した淳也の弟のこと、そして淳也に特別な力があることを聞かされます。有生の危機を知った拓人は、彼女を救うために学校へと急ぎます。

登場人物

矢萩 有生（やはぎ うみ）
高校1年生。拓人の妹。淳也の異変に気づき、独自に情報を集めます。
矢萩 拓人（やはぎ たくと）
高校2年生。有生の兄で、淳也の幼なじみ。淳也との過去の出来事を思い出し、事件の真相を追います。
三崎 淳也（みつさき じゅんや）
高校2年生。拓人の幼なじみ。過去の出来事が原因で、奇妙な力に苦しめられています。
羽倉 真由美（はくら まゆみ）
高校1年生。淳也の中学時代の同級生。「3年前の事件」を知る人物。
拓人と有生の母
有生の実母。淳也の異変を心配しています。
淳也の養母
淳也の過去について知っています。

おまつり山

拓人と淳也が子供の頃に探検した場所。かつて祠がありましたが、現在はマンションが建っています。過去には鬼が封じられたという伝説があります。

ラストシーンの評価

物語はクライマックスまで緻密な心理描写がなされていますが、ラストシーンにはいくつかの不可解な点が残されています。淳也の生死や鬼の目的など、明確に描かれていない部分があり、読者の間で様々な解釈が生まれています。作者自身も単行本収録の際に補足説明を行っていません。

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