君川丸 (特設水上機母艦)

君川丸（きみかわまる）

君川丸は、川崎汽船が所有した神川丸型貨物船の三番船であり、その歴史は興味深いエピソードに彩られています。1937年7月15日に川崎造船所で竣工し、商業航海から軍艦としての運用に転じるまでの経緯は、当時の国際情勢と密接に関連しています。実際、君川丸は太平洋戦争の勃発によりその役割を大きく変えることとなりました。

概要

君川丸は、川崎汽船が牽引した優秀船隊整備計画の一環として建造されました。神川丸、聖川丸、國川丸の姉妹船とともに命名されたこの船は、最初は商業用に設計されていました。初めはニューヨークやイタリアへの航海に従事していましたが、太平洋戦争の勃発によりその運命は大きく変化します。1941年7月6日に日本海軍に徴用され、特設水上機母艦としての役を果たすことになります。

軍艦としての運用

艦長である宇宿主一のもと、君川丸は1941年7月25日に正式に艦籍に登録されました。ここから君川丸は主に偵察や哨戒任務を担当し、北方での戦闘に従事しました。開戦初期の段階では、飛行哨戒や視察活動を行い、敵に対する早期警戒を実現しました。また、12月には厚岸と幌筵方面へ出向き、航空機の監視活動を続けました。

その後、君川丸はアリューシャン作戦にも参加し、重要な役割を果たしました。北方で唯一の艦隊航空戦力として、敵に対抗するための航空作戦の支援を行いました。しかし、1943年5月にはアメリカ潜水艦の攻撃を受けるものの、幸いにも被害を最小限に抑えることができました。

沈没

君川丸の運命は、1943年10月のある日、大きく変わります。特設運送船としての艤装を施され、佐世保海軍工廠で新たな任務に備えていた君川丸は、1943年12月27日、潮岬沖でアメリカ潜水艦トートグの攻撃を受けます。六番船倉に命中した魚雷により、君川丸は大破。被害は甚大で、逃げ込んだ袋港から神戸港へ曳航され、修理が行われましたが、その後も運命は厳しいものでした。

修理を終え、再度船団に参加した君川丸は、次々に襲撃を受け、ついには1944年10月23日、アメリカ潜水艦ソーフィッシュの攻撃を受け、沈没してしまいます。この攻撃により、船員の中には戦死者も出ました。君川丸は1944年12月10日に正式に除籍され、その長い航海の歴史に幕を閉じました。

艦長たちの足跡

君川丸の運命を見守った艦長たちも重要な人物です。青木節二、宇宿主一、八島元徳、小橋義亮などの艦長が在任し、それぞれが艦の運営において重要な役割を果たしました。彼らの指導の下、君川丸は数多くの任務を遂行しながら、その存在感を示してきました。

二代目君川丸

戦後、川崎汽船は新たに二代目となる君川丸を建造しました。この新しい船は1951年に竣工し、北米航路での活躍が期待されましたが、1974年には座礁事故により沈没する運命を辿ります。

君川丸は、その存在と歴史を通じて多くの人々に記憶され続けることでしょう。

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