水上機母艦

水上機母艦の概要

水上機母艦は、水上機を搭載し、発進や格納を行うための機能を装備した軍艦です。カタパルトを使っての発進や、水上に降ろした機体を吊り上げることができます。第一次世界大戦当時、「航空母艦」とは水上機母艦を指しており、当時はこの表現が一般的でした。

歴史的背景

第二次世界大戦以前

水上機を本格的に運用するための最初の艦艇は、1912年に就役したフランス海軍の「フードル」です。この艦船は元々水雷母艦であり、当初は水上機1機の収容施設を備えていました。1912年に本格的に水上機母艦として改修され、水上機8機を載せるための設備と滑走台が整備されました。

1914年12月、イギリス海軍が就役させた「アーク・ロイヤル」をはじめ、この時の水上機母艦はカタパルトを持たず、クレーンを利用して機体を水面に下ろして発進させる方法が主流でした。しかし、一部では1913年にフードルによって艦上からの滑走台を利用した発進も試みられました。

1914年7月、第一次世界大戦が始まると日本海軍は、運送船である「若宮丸」を改装し、特設水上機母艦としました。この艦艇は、青島攻略戦における偵察行動に参加しました。また、イギリス海軍は商船を改造した水上機母艦を数多く運用し、ドイツ軍の飛行船基地への空襲を行いました。ロシア海軍も独自に水上機母艦を編成し、艦隊と協力した作戦を展開しました。

第一次世界大戦が進行する中で、飛行甲板を備え陸上機を運用する艦艇（後の航空母艦）が現れ、実戦に参加するようになりました。1918年には、初の水上機母艦でない航空母艦「フューリアス」がドイツの飛行船基地への攻撃を行っています。戦後の1920年代には、日米英の海軍が航空母艦と艦載機の開発を進め、水上機は性能的にも劣ることから、主力としての運用が難しくなっていきました。

進化と変化

日本海軍では「山城」の主砲上に滑走路を設けて飛行機を発進させる試みや、イギリス海軍の「フューリアス」において前甲板の主砲を撤去して飛行甲板を設ける実験が行われました。1918年9月、英海軍初の全通飛行甲板を持つ艦「アーガス」が竣工し、艦載機を搭載する航空母艦が期待されるようになります。水上機母艦は、艦隊随伴や艦隊防空の役割を持ちましたが、次第に高波に弱い特性や水上機の搭載が他艦にシフトする中で、移動基地的な運用が増えていきました。

航空母艦の設計制限を回避するために、例えば日本海軍の千歳型水上機母艦は、航空母艦への迅速な改装が可能な設計となっていました。また、技術進歩によりカタパルトが各艦に標準装備されるようになり、航行中の母艦に水上機を収容する手段も開発されましたが、広く普及することはありませんでした。

第二次大戦以降

1937年の日中戦争や1941年の太平洋戦争勃発により、多くの商船が徴用され、水上機母艦として改装されました。この時期、正規の水上機母艦は上陸戦の支援に利用されましたが、戦争が進むにつれ移動基地や輸送任務に転用されることが増えました。1943年の終わりには、千歳型の一部が空母として改装され、アメリカ海軍も移動基地の役割を果たしました。

戦後は、ヘリコプター技術の進歩や、飛行艇を除く水上機の役割が衰退したことで、水上機母艦自体も姿を消しました。1960年代にはアメリカ海軍が保持していた飛行艇支援用の水上機母艦も他用途へ転用され、ほぼ全てが退役することとなります。

水上機母艦とその類似艦艇

水上機母艦は、多くの海軍で多様な用途で運用されました。その中で、速吸やソーントン、最上、ゴトランド、伊四〇〇型潜水艦、ノートン・サウンドといった艦艇も水上機の運用を想定し、様々な改修が行われました。それにより、水上機母艦は海軍の多様な任務に貢献したのです。

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