君恋し

君恋し（きみこいし）

「君恋し」は、昭和初期の流行歌として広く知られており、時雨音羽の歌詞と佐々紅華の作曲によって生まれました。この曲は特に二部形式の構造を持っており、その特徴が多くの人々に親しまれる要因となっています。

曲の誕生と初期の録音

この楽曲のオリジナル版は、1922年頃に佐々紅華が作曲したものです。この頃、彼は自身で作詞も手がけていましたが、後に時雨音羽によって新しい歌詞が付けられました。二村定一という歌手が大正期から舞台でこの曲を歌い、東京蓄音器にレコーディングされたという説もあるものの、そのレコードは現存していません。その後、高井ルビーによって1926年に日本蓄音器商会からレコーディングされ、発売されました。

1928年10月、二村定一は日本ビクターによって録音し、12月20日に新譜として発売されました。この時の歌詞は時雨音羽によるものですが、「君恋し」のフレーズはそのまま残されました。このレバイバル版は、二村にとっての代表曲となり、昭和初期のヒット作として名を馳せました。特に1929年には20万枚以上の売り上げを記録し、様々なアーティストにカバーされていくことになります。

人気の広がりとカバー

時雨音羽版の成功を受けて、佐々紅華の原曲も再び注目されることになり、他の歌手によるカバーも次々と行われました。1961年、フランク永井のカバー版は新たな風を吹き込み、ムーディーでリズミカルなアレンジが施されました。これも大ヒットし、同年の日本レコード大賞グランプリを受賞。フランクの版は特に人気となり、1968年には55万枚の売り上げを記録しました。その他の有名なカバー歌手としては、1971年に藤圭子、1975年には小柳ルミ子がこの曲を歌っています。また、2008年には黒人演歌歌手のジェロがカバーし、再び注目を集めました。

音楽的特徴

「君恋し」は、その音楽的な側面も魅力的です。井田一郎によるアレンジは、日本ビクターのジャズバンドの演奏で、サックスやトランペット、トロンボーンなどの楽器が使われています。流行のフォックストロットのリズムが取り入れられ、短いイントロの後に歌詞が続く展開は、聴き手を惹きつけます。また、曲の後半には「ホーム・スイート・ホーム」が引用され、独特の音楽的な雰囲気を醸し出しています。アレンジには、演奏者の個々のソロが活かされる細やかさが求められています。

歴史に残る影響

「君恋し」は、音楽の歴史の中でも特に重要な作品とされています。戦後のリバイバルヒットをはじめ、多くのアーティストにカバーされ、幅広い世代に愛されています。この曲は、流行歌における草創期を代表する楽曲の一つであり、今後も多くの人々に歌い継がれることでしょう。

その他の文化的影響

また、この曲は大阪のABCラジオで特定の番組のテーマ曲としても使われており、さまざまな文化的な影響を持っています。さらに、有名な上方漫才のコンビ名がこの曲に由来しているなど、音楽だけでなく他の分野にもその影響が見られます。

「君恋し」は、時代を超えて多くの人に愛され続ける名曲であり、その魅力は決して色褪せることはありません。

もう一度検索