高井ルビー

高井ルビー（1903年 - 1972年）は、日本の歌手、女優であり、本名を天田春音といいます。大正時代から昭和初期にかけて、浅草オペラの舞台でソプラノ歌手として輝かしい活躍を見せました。その華麗な歌声と演技で、多くの観客を魅了したことで知られています。

群馬県に生まれた高井ルビーは、10代の頃に上京し、歌手の井上起久子に師事しました。1920年には、演出家の獏与太平に見出され、オペラ女優としてのキャリアをスタートさせます。初期の芸名は高井爾美でしたが、これは師である井上によって付けられたとされています。彼女の芸名の由来は、駆け出しの頃に大学生のパーティーに招かれた際、小道具の指輪を着用したところ、学生に「あっ、高いルビー」と言われたことに因むという逸話が残っています。

高井ルビーは、新星歌舞劇団、生駒歌劇団を経て、関東大震災後には清水金太郎や田谷力三らが所属していた森歌劇団に加わりました。この頃から、オペレッタ風の童謡歌劇や流行歌を数多く吹き込み、浅草オペラで活躍した二村定一とのデュエットも人気を博しました。特に「君恋し」は、二村定一よりも先に吹き込んだことで知られています。浅草オペラの第一線から退いた後は、1937年に満州の名門ダンスホール「ぺロケ」の専属歌手を務めました。

また、オペラ女優として活動していた1920年代には、作曲家の近藤政二郎との間に一女をもうけています。戦後、1960年代には横浜で旅館を経営し、晩年は実妹と共に娘が住む静岡県熱海市に移り住み、小料理屋を営んでいました。1972年7月5日、心不全のため69歳でその生涯を閉じました。

彼女のディスコグラフィーには、「かくれんぼ」「遊覧電車」「わたしのお家」などの御伽歌劇や童謡、「旅の夢」「ドンが鳴る迄」「君恋し」「銀座小唄」といった流行歌が名を連ねています。これらの楽曲は、当時の音楽シーンを彩り、高井ルビーの歌声は多くの人々に愛されました。また、天田春美名義でも「乙女は恋に弱いもの」をリリースしています。

高井ルビーは、その才能と努力で浅草オペラの黄金期を築き、日本の音楽史にその名を刻みました。彼女の生涯は、清島利典著『日本ミュージカル事始め 佐々紅華と浅草オペレッタ』や石川桂子著『大正ロマン手帖-ノスタルジック&モダンの世界』などの書籍でも紹介されており、その功績は今もなお語り継がれています。また、インターネット上にも、彼女の足跡を辿る記事や研究が残されており、多くの人々が彼女の魅力を再発見しています。

高井ルビーは、浅草オペラの歴史において重要な役割を果たしただけでなく、その後の日本の音楽文化にも大きな影響を与えた人物と言えるでしょう。

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