否定と肯定

映画『否定と肯定』の詳細

『否定と肯定』（英: Denial）は、2016年に公開されたイギリスとアメリカ合衆国の歴史映画です。この作品は、デボラ・E・リップシュタットの著書『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる戦い』を基に、ホロコースト否定論者であるデイヴィッド・アーヴィングとの名誉毀損を巡る裁判を描いています。監督はミック・ジャクソン、脚本はデヴィッド・ヘアーが手がけ、主演にはレイチェル・ワイズがリップシュタット役、ティモシー・スポールがアーヴィング役を演じています。その他、トム・ウィルキンソン、アンドリュー・スコットなど、豪華なキャストが揃っています。

ストーリーのあらすじ

物語は、アメリカの女性ユダヤ人のホロコースト研究者であるデボラ・E・リップシュタット教授の闘いから始まります。リップシュタットは、ナチス・ドイツやホロコーストについて著作を発表し、アーヴィングをその著作の中で否定論者として名指ししました。これに反発したアーヴィングは、名誉毀損の訴訟を起こし、リップシュタットはイギリスの法廷で自身の立場を守るため、異なる法的システムに挑むことになります。

イギリスの法律では、被告が証明する責任を負うため、リップシュタットはアーヴィングの主張が虚偽であることを証明しなければなりません。彼女は、強力な法廷チームを結成し、特に闘志旺盛な弁護士であるリチャード・ランプトンとともに、万全の準備を整えます。しかし、知らない土地での戦いにおいて、イギリス独特の法的慣習や事務的な手続きに戸惑い、精神的にも追い詰められていくリップシュタット。

訴訟とその葛藤

法廷では、リップシュタットと彼女のチームは、アーヴィングが否定するホロコーストの事実を証明するために、アウシュビッツ強制収容所を訪れ、現地の学者たちとともに調査を行います。一方、アーヴィングは自分一人で法廷に立ち、自らの主張を繰り返しますが、リップシュタットたちはその捻じ曲がった証言に対抗するため、戦略を練り続けます。

途中、リップシュタットのチームはアーヴィングに有利であると見なされる陪審制を避け、判事による審理を望むようになります。彼らは、アーヴィングのエゴを利用し、慎重かつ効果的に展開することに成功。その後の法廷での証言や証拠提出を通じて、アーヴィングの主張の不条理さを暴露する過程が描かれます。

結末と反響

裁判の最終段階では、裁判官がアーヴィングの主張を完全に否定するものの、彼が信じる真実を語っているという理由から、リップシュタットの法律チームは一瞬の動揺を覚えます。しかし、この一連の裁判を通じて、リップシュタットはその堂々とした態度によって称賛され、彼女の著作がアーヴィングの嘘を論破し、勝利に導く基礎を築いたことに気付くのです。

「否定と肯定」は、その強いメッセージと真実への渇望を描いており、誤った情報や歴史の修正主義に対する警告としても受け取られています。映画は2016年にトロント国際映画祭で初公開され、以降世界中で高い評価を受けました。特に、批評家からは見事な演技と緻密なストーリーテリングが称賛され、観客に深い考察を促す作品となっています。

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