否認主義

否認主義（Denialism）

否認主義とは、人が心理的に不快な真実を回避するために、現実を否認するという選択を指します。受け入れたくない事実や考えに対して、それを否定することで心の安定を保とうとする心理メカニズムが働きます。この否認主義は、個人の行動だけでなく、社会全体に影響を及ぼすこともあります。

歴史否定主義（Historical negationism）

歴史否定主義は、過去に起きた出来事、特に大量虐殺や戦争犯罪といった重大な出来事の事実を否定または矮小化する立場です。ネガシオニスム（仏: Négationnisme、英: Negationism）とも呼ばれ、ホロコースト否認はその代表的な例です。ホロコースト否認は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって行われたユダヤ人大量虐殺（ホロコースト）の存在を否定するもので、多くの国でヘイトスピーチとして規制されています。

ドイツをはじめとするヨーロッパの一部の国では、ホロコースト否認やナチス賛美に関する主張、出版、公開は法律で禁止されています。これは、過去の悲劇を繰り返さないための重要な措置です。

現代における否認主義の例

否認主義は、歴史的な出来事だけでなく、現代社会の様々な問題にも見られます。

AIDS否認主義

AIDS否認主義は、後天性免疫不全症候群（AIDS）の原因がヒト免疫不全ウイルス（HIV）であることを否定する立場です。HIVウイルスの存在自体を否定する者もいれば、HIVは無害なウイルスであると主張する者もいます。しかし、科学的な証拠はHIVがAIDSを引き起こすことを明確に示しています。

地球温暖化

地球温暖化否認論者は、地球温暖化の存在や、それが人間の活動によって引き起こされているという科学的合意を否定します。彼らは、気候変動は自然現象であり、人間の活動はほとんど影響を与えないと主張します。しかし、科学的なデータは、地球温暖化が人間の活動によって引き起こされていることを強く示唆しています。

COVID-19

COVID-19パンデミックの間にも、COVID-19の危険性やワクチンの有効性を否定する人々が現れました。彼らは、COVID-19は単なる風邪であり、ワクチンは危険であると主張し、公衆衛生対策を妨げました。

その他の例

進化論
地球平面説

歴史的な例

アルメニア人虐殺否認
ホロコースト否認
ナクバ否認

否認主義の背景

否認主義の背景には、様々な要因が考えられます。心理的な要因としては、現実を受け入れたくないという願望や、自己の信念体系を守りたいという欲求があります。社会的な要因としては、特定の政治的、経済的な利益を追求したいという思惑や、集団内部の結束を強めたいという意図があります。

否認主義への対処

否認主義に対処するためには、科学的な証拠に基づいた情報を提供し、議論を促すことが重要です。また、感情的な対立を避け、冷静かつ客観的な態度でコミュニケーションをとることが大切です。教育を通じて、批判的思考力を養い、情報を鵜呑みにしない姿勢を育むことも、否認主義の蔓延を防ぐ上で不可欠です。

関連項目

妄想
カルト
無知学
確証バイアス
蒙昧主義
赤い薬と青い薬
疑似懐疑論
環境懐疑論
反環境主義
環境保護行動の障壁
接種理論
* 気候変動否認の心理学

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