呉市交通局800形電車

呉市交通局800形電車

呉市交通局800形電車は、広島県呉市の路面電車である呉市電に導入された電車です。1955年から1955年まで営業運転を行い、1967年からは岡山電気軌道に譲渡されて使用されました。800形電車は、新型車両として当時の最新技術を取り入れており、特に旅行者や通勤客に対して快適な乗り心地を提供することを目的として設計されました。

背景と製造

呉市電は1950年代前半に運賃の値上げを行った際、そのサービス向上の一環として新型車両の導入を決定しました。これを受けて、1954年度の予算に新型電車の製造費用が計上され、結果として800形電車の2両の製造が実現しました。

800形電車は、軽量鋼を用いた全金属製の車体を装備しており、2枚の運転台窓が特徴です。乗降扉は自動で開閉し、車両の左右には非対称に配置されていました。車内は改善された座席の設計により、従来の車両よりも快適な乗り心地を実現しています。座席にはスプリングとラテックスが併用され、ソフトなクッションが使われています。また、車内の照明には蛍光灯が使用され、明るさが向上しました。吊革も走行時の揺れが少ない金属製の反転式が採用され、乗客に配慮された設計となっています。

車両の技術的特徴

800形は、運転台に加えて側面にも大きな方向幕が取り付けられて点灯され、視認性にも配慮されています。この車体は帝國車輛工業によって製造されました。

台車は住友金属によって製造された一体鋳鋼製のモデル（FS-70）が採用され、振動や騒音を抑えるために防振ゴムが使用されていました。さらに、従来の板ばねからゴムばねに変更し、スムーズな加速・減速を実現するためにローラーベアリングが採用されています。電気機器に関しては、三菱電機の製品が使用されています。これらの高い技術を取り入れたため、800形は「PCC形」や「無騒音電車」と称されるようになりました。

運用と移籍

800形電車は1955年に2両（801、802）が製造され、同年5月30日から営業運転を開始しました。営業運転開始時には、前照灯が運転台の上に設置されていましたが、後に運転台窓の下に移設されることとなりました。

呉市電が全廃される直前の1967年、800形は岡山県岡山市にある岡山電気軌道に譲渡されました。譲渡から数ヶ月後の12月30日には、2000形（2001、2002）として営業運転に入ります。その後、800形はボギー車と共に従来の2軸車を置き換え、13年間にわたって主力車両として活躍しましたが、1980年4月10日に両車両ともに廃車されました。その後、残った台車や機器は7000形など他の車両に流用され、長い歴史を閉じました。

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