告げ口屋さん

告げ口屋（つげぐちやさん）

フランシスコ・デ・ゴヤが1797年から1799年にかけて制作した銅版画『告げ口屋』は、版画集《ロス・カプリーチョス》の一部として1973年に完成しました。この作品は、スペインのカトリック教の腐敗や異端審問を鋭く風刺しており、特に社会における非現実的な魔物たちの姿を通じて批判が展開されています。

作品の内容と解釈

『告げ口屋』では、猫の魔物にまたがった怪物が空を飛び、男たちに鋭く息を吹きかけています。画面の左側には、他の魔物たちが男たちに対して尻を向け、放屁をかける様子が描かれています。また、画面の右端には、角を持つ魔物が激しく吠えている姿があります。一方で、男たちは恐怖に怯え、地面にうずくまりながら両手で耳を押さえています。この構図は、社会への批判の意図が隠されていることを示唆していますが、その具体的な意味は明確ではありません。

特に最前景にいる人物は、修道士のような服装をしており、聖職者への告解に対する批判を意図している可能性があると考えられています。この見解はスペイン国立図書館の写本と一致し、「耳打ちされた告解は、修道士たちを汚物で満たす」というコメントが添えられています。一方で、プラド美術館に所蔵されている別の手稿は、この作品を魔女の知性の欠如を風刺したものと解釈しています。

歴史的背景

作品の図像は、劇作家レアンドロ・フェルナンデス・デ・モラティンの『1610年11月6日・7日のログローニョにおけるアウト・デ・フェ』に触発されていると言われています。これは、バスク地方のログローニョで行われた有名な魔女裁判に関連し、そこで7000人以上が魔女として告発され、31人が火刑にされるという事件が背景にあります。このような歴史を踏まえた上で、ゴヤは異端審問に対する告発者たちを風刺する意図を持っていたとみられます。『告げ口屋』における「密告者（Soplones）」という言葉は「裏切者」と同義であり、特にその使い方が重要です。

来歴と保存状況

『告げ口屋』の準備素描は、ゴヤの死後に彼の息子とその孫に相続され、後にスペイン女王イサベル2世の宮廷画家であったバレンティン・カルデレラに渡りました。1861年頃、カルデレラはマリアーノから素描を入手し、1880年に所有権が移りました。1886年にはプラド美術館がその作品を購入し、現在も同館に所蔵されています。

関連作品と影響

『告げ口屋』は他のゴヤの作品同様、社会を洞察する視点を提供しています。その風刺的な要素は、今日においても人々に影響を与え続けており、歴史的な背景を考慮する上でも重要な作品となっています。彼の作品は、ただの芸術作品ではなく、当時の社会や宗教に対する批判を訴えかける力を持っています。

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この作品は、ゴヤの鋭い観察力と社会への反応を示す一例であり、今日もなおその意味を問いかける重要なアートとして位置付けられています。

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