告白 (1970年の映画)

『告白』（原題: L’Aveu）は、1970年に製作されたフランス・イタリア合作の政治映画です。監督はコスタ＝ガヴラス、主演はイヴ・モンタン。この作品は、1951年にチェコスロバキアで起こったスラーンスキー事件、すなわち、スターリン主義者による大規模な粛清事件を題材としています。事件の当事者であったアルトゥール・ロンドンの手記を基に、権力による不正義と人間の尊厳が描かれています。

あらすじ

物語は1951年のプラハを舞台に展開されます。主人公のアルトゥール・ロンドンは、スペイン内戦や対独レジスタンス運動に参加した輝かしい経歴を持つ外務次官。しかし、ある日突然、秘密警察によって逮捕されます。彼は西側のスパイ容疑という、全く身に覚えのない罪を着せられ、独房での過酷な取り調べを受けます。当局は彼に自白を強要しますが、ロンドンは一貫して容疑を否認します。

しかし、逮捕された友人たちは次々と罪を「告白」し、ロンドンは次第に孤立し、精神的に追い詰められていきます。最終的に、彼は耐え難い圧力に屈し、自らも罪を認めざるを得なくなります。この事件は、共産党内部の権力闘争によって引き起こされた大粛清の一環であり、ロンドンはその犠牲者の一人だったのです。

映画の背景とテーマ

『告白』は、スターリニズムに対する怒りを込めた作品でありながら、監督のガヴラスや主演のイヴ・モンタン自身も共産主義のシンパであったという点が注目されます。映画は、権力構造の矛盾と、その中で翻弄される人間の姿を浮き彫りにしています。

キャスト

ジェラール/アルトゥール・ロンドン：イヴ・モンタン
リーズ・ロンドン（アルトゥールの妻）：シモーヌ・シニョレ
コウテック（共産党幹部）：ガブリエーレ・フェルツェッティ

制作の裏側

イヴ・モンタンは、役作りのために15キロもの減量を敢行しました。また、釈放後にパリに住んでいたロンドンが手記を書き終えた後、チェコスロバキアではプラハの春が起こりました。ロンドンはチェコ国内で手記を出版しようと帰国しますが、ソ連軍の軍事介入によってその希望は打ち砕かれます。この事件を受けて、ガヴラス監督は急遽、映画にそのシーンを追加しました。

関連情報

映画は、以下の書籍を原作としています。

Artur a Lise London: L'aveu, dans l'engrenage du proces de Prague, Gallimard, Paris 1968
London, Artur (1971). Confession. USA: Ballantine Books.
稲田三吉・訳『自白－プラハ裁判煉獄記（上・下）』サイマル出版会、1972年

関連事項

ルドルフ・スラーンスキー
スラーンスキー事件
チェコの歴史
チェコスロバキア共産党
スターリニズム
プラハの春

『告白』は、政治的な背景を持つ作品でありながら、普遍的なテーマを描いた作品として、今なお多くの人々に衝撃を与え続けています。

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