周弘正

周弘正の生涯と業績

周弘正（しゅう こうせい、建武3年（496年）- 太建元年6月3日（574年7月7日））は、南朝の梁から陳の時代にかけて、著名な学者や官僚として名を馳せた人物です。彼の字は思行で、本貫は汝南郡安成県です。彼の家系は東晋の尚書左僕射である周顗から続いており、祖父の周顒は斉の中書侍郎、父の周宝始は梁の司徒祭酒として知られています。

幼少期と学び

弘正は幼少期に父を失い、伯父の周捨に育てられました。10歳の頃には『老子』や『周易』を理解し始め、伯父からは「後世に名を知られる人物になるだろう」と評されます。彼の才能を見込んだ裴子野が娘を嫁がせたいとしたが、弘正は15歳で国子生となり、国学で『周易』の講義を行いました。学問に対する情熱は早くから示され、試験を受けるまで待たずとも、多くの学生たちから師として仰がれました。

官僚としての活動

弘正は梁の太学博士を最初の職務としてスタートし、その後も様々な職に就きました。晋安王蕭綱の下で主簿になり、故郷の鄴県の県令として任命されましたが、母の死去により一時職を離れました。喪が明けると、弘正は曲阿県令や安吉県令に転任し、国の文書を扱う司義侍郎としての役目も果たしました。

中大通3年（531年）には、昭明太子蕭統の死後、後任を巡る問題に関与し、蕭綱に太子位の辞退を勧めました。国子博士となった後、士林館の設立に携わり、朝野の人々から多くの聴講者が集まりました。弘正は南朝の武帝に対し『周易』に関する疑義を述べ、さらに講釈を行ったことが彼の学識の深さを示しています。

占術と政治的な洞察

弘正は天文を研究し、占術にも秀でていました。大同末年には、弟に国家の厄運を伝え、数年内に兵乱が起こることを示唆しました。太清元年（547年）に武帝が侯景を迎え入れた際、弘正は再び不安を表明し、乱の兆しを見抜く能力が評価されました。太清3年には、侯景の乱が建康を襲うと、弘正は迅速に行動し、弟と共に逃げ延びました。この際、湘東王蕭繹からの信書による迎えもあり、弘正は特別な待遇を受けました。

書籍校定や遷都論争

江陵に戻った弘正は、その後王僧弁の下で要職を歴任しつつ、書籍の校定作業にも取り組みました。元帝即位後には建康への遷都に関する議論が持ち上がりましたが、弘正は当初反対の立場を取りました。最終的に遷都は行われなかったものの、彼の発言が元帝の耳に届いたことは称賛されました。

晩年と著作

承聖3年（554年）には江陵が陥落し、弘正は再び建康に戻り、大司馬長史という重要な役職に就きました。その後、様々な役職を歴任し、最終的には国子祭酒として名声を確立。太建元年6月に死去した際には、79歳でした。彼に贈られた諡号は簡子で、多くの著書を残しており、特に『周易講疏』や『論語疏』などが当時の人々に広く読まれました。

弘正の子供たちにもその影響は及び、息子の周墳は吏部郎として官職に就き、娘は世に名を知られた家柄に嫁ぎました。彼の学問や政治活動は、後世にわたり語り継がれる存在となっています。

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