周新

明代官僚 周新の生涯：正義を貫いた冷面寒鉄公

周新（しゅうしん、生年不詳 - 1413年）は、明代の官僚として知られる人物です。字は志新、広州府南海県を本貫とします。その生涯は、正義を貫き通した結果、悲劇的な最期を迎えるという、ドラマチックなものでした。

若い頃、貢生として太学に入学。その後、大理寺評事に任命され、公平な刑事判断で名を馳せます。その剛直な人柄から、同僚や上司から一目置かれる存在でした。

永楽2年（1404年）、周新は監察御史に昇進。福建、北京と各地を巡察し、地方官による不正や権力乱用を厳しく糾弾しました。特に福建巡按時には、都司衛所が府州県を越権する事態を憂慮し、その是正を朝廷に上奏しています。その功績が認められ、永楽3年（1405年）には雲南按察使に抜擢されますが、赴任せず、永楽6年（1408年）には浙江按察使に転任しました。

浙江按察使在任中は、数々の不正を暴き、民衆の信頼を得ました。永楽10年（1412年）、浙西地方で発生した大洪水において、通政の趙居任がその事実を隠蔽しようとしたことを周新は察知し、朝廷に直訴。この結果、趙居任は解任され、周新の進言に基づき、被災地の租税免除や救済措置が実施されました。

同年、嘉興府で倪弘三率いる反乱軍が蜂起。各地を襲撃し、官軍を次々と撃破していました。周新は自ら兵を率い、反乱軍の鎮圧に乗り出します。巧みな戦略で反乱軍を桃源まで追いつめ、倪弘三らを捕縛し、朝廷に献上しました。この功績により、周新の名は全国に知れ渡ることになります。

しかし、周新の活躍は、権力者からの反感を招くことにも繋がりました。錦衣衛指揮の紀綱は、浙江で私腹を肥やし、不正を繰り返していました。周新は紀綱配下の千戸の不正を暴こうとしましたが、千戸は逃亡。周新は追跡し、千戸を捕縛することに成功しますが、紀綱は周新を誣告します。

永楽帝は紀綱の誣告を信じ、周新を逮捕、処刑するよう命じました。周新は処刑される際、「生きて直臣となったからには、死しては直鬼となるべし」と叫んだと伝えられています。

周新の死後、永楽帝は後悔し、周新の出身地を尋ね、「嶺外にこのような人物がいたのに、誤って殺してしまった」と嘆いたと言われています。その後、紀綱も罪により処刑されました。周新の正義感と清廉潔白な人柄は、民衆の間に深く記憶され、現在でも語り継がれています。

周新は冷徹なまでに正義を貫き、不正を許さない姿勢から「冷面寒鉄公」と呼ばれました。その名は、南京の子供たちまでが恐れるほどでした。一方、民衆からは絶大な信頼を得ており、浙江で冤罪で投獄されていた民衆は、周新の赴任を聞き、「娑婆にもどることができよう」と喜び勇んだという逸話も残っています。

周新は、身分を隠して地方に赴き、不正を行う県令を自ら逮捕、弾劾したという逸話も残っています。権力や身分に関わらず、不正を許さなかった周新の姿勢は、後世に大きな影響を与えました。彼の生涯は、権力と闘い、正義を貫き通した、一人の官僚の物語として、今もなお人々に語り継がれています。

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