太学

太学とは

太学（たいがく、拼音: tàixué）とは、中国や朝鮮、ベトナムにおいて設けられた官立の高等教育機関です。この機関は、古代の教育体系の中で最高学府とされ、主に官僚の育成を目的としていました。

中国における太学

中国では「太学」という名称が古代の経書に見られます。『礼記』の中では、舜（虞）が設置した「上庠」や、周の時代の「辟雍」といった教育機関が言及されています。これらは貴族の子弟を対象としたものであり、やがて「国学」「太学」「大学」と称されるようになりましたが、「太学」という組織が確立されたのは漢代以降です。

漢代以後の太学

漢代では、太学が首都の高等教育機関として正式に設置されました。特に前漢の武帝によって董仲舒の提案をもとに設立されたことが知られています。前漢の太学は長安（現在の西安）に、後漢の時代には洛陽に移され、地方から選ばれた学生たちは試験を通じて官職を得る道が開かれていました。後漢では、学生数が3万人を超えるなど、太学が政治的な勢力を持つ成長を遂げました。

さらに、魏や蜀、呉においても太学が設けられ、西晋の時代には洛陽、東晋では建康（南京）に太学が設立されました。西晋の咸寧2年（276年）、公卿や大夫の子弟教育機関として「国子学」が設立され、両者は国子祭酒の管理下にありました。

隋唐以後

唐代になると、太学と国子学が共に存在し、国家の教育機関「国子監」下の六学の一つとして機能しました。太学を卒業した者は、科挙の最終試験である省試を受験する資格を得られました。その時代、遣唐使として中国に留学した阿倍仲麻呂も太学で学んでいます。宋代以降、科挙制度が整備されるにつれ、太学の官僚育成の役割は次第に薄れていきました。明代には、すべての教育機関が一つの「国子監」に統合され、清末までこの名称が使用されました。

朝鮮半島における太学

高句麗時代には「太学」（태학）が設けられ、372年に小獣林王が儒教に基づく教育を行いました。この際、中国系移民の影響があり、高句麗の社会基盤が中国の楽浪郡・帯方郡の住民によって支えられていたことが背景にあります。高句麗は仏教も受け入れましたが、太学の設置は貴族階級の教育を通じて官吏を育成するためでした。

その後、百済でも太学が設立され、「太学正」がその長官を務めました。新羅や高麗でもそれぞれ「国学」（国子監）を創設し、教育の中心となりました。高麗王朝末期には「国子監」が「成均館」へと改称され、朝鮮王朝でも同様の名称が受け継がれました。

ベトナムの太学

ベトナムでは陳朝の太宗が建中8年（1232年）に「太学」（Thái học）を設立しました。ここで太学生たちは科挙試験を受ける資格を得ました。黎朝の黎利が即位した1428年には、首都昇龍に「国子監」（Quốc Tử Giám）が設置され、この制度は後に阮朝にも引き継がれました。1819年に科挙は廃止され、国子監も同様に姿を消しました。

太学は、古代の官立高等教育機関として、多くの人々を育成し、各国の教育体系に多大な影響を残しました。

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