周春秀

周 春秀（しゅう しゅんしゅう、Zhōu Chūnxiù）は、1978年11月15日生まれ、中国の河南省出身の元女子マラソン選手です。身長163cm、体重44kgと小柄ながら、粘り強い走りで世界の舞台で活躍しました。彼女の指導者には、日本の竹内伸也がいます。竹内はかつて、ソウルオリンピック5位の趙友鳳や、双子の大南博美・敬美姉妹といった著名な選手を育てた実績を持つ指導者でした。

競技キャリア

周春秀の競技キャリアは、2003年のアモイマラソンでの初マラソン初優勝から始まりました。同年には北京国際マラソンで2時間23分42秒を記録して2位に入り、中国国内のトップランナーとして注目されるようになります。2004年のアテネオリンピックでは33位にとどまりましたが、翌2005年の世界陸上ヘルシンキ大会では、2時間24分12秒で5位入賞を果たし、日本代表選手を含むアジア勢のトップでゴールしました。

2006年に入ると、彼女の力はさらに飛躍します。3月のソウル国際マラソンでは、氷点下という厳しい気象条件下で2時間19分51秒の自己ベストをマークし優勝。この記録は、当時の中国女子マラソン歴代2位、アジア歴代5位に位置づけられるものでした。同年12月のドーハアジア競技大会では、序盤から積極的な走りで独走態勢を築き、2位以下に大差をつけて金メダルを獲得しました。

2007年4月のロンドンマラソンでも2時間20分38秒で優勝。そして、自国以外で開催された主要国際大会でのハイライトとなるのが、9月の世界陸上大阪大会です。レース直前に足の甲に怪我を負いながらも出場し、ケニアのキャサリン・ヌデレバに次ぐ2位に入り、銀メダルを獲得しました（この大会では日本の土佐礼子が3位でした）。

地元中国で開催された2008年北京オリンピックでは、直前に日本の野口みずき選手が欠場したこともあり、金メダル候補の一人と目されていました。しかし、ルーマニアのコンスタンティナ・トメスクが仕掛けたロングスパートに対応できず、最終盤には2位のヌデレバ選手にも抜かれましたが、3位でゴールし、銅メダルを獲得しました。

2009年の世界陸上ベルリン大会では4位入賞となり、2大会連続でのメダル獲得はなりませんでしたが、翌2010年11月の広州アジア競技大会では、終盤に自らスパートをかけて優勝。これにより、アジア競技大会の女子マラソンにおいて、史上初となる2大会連続での金メダルという偉業を達成しました。

また、2005年には3月13日のソウル国際マラソンで優勝した後、わずか13日後の3月26日に行われたアモイマラソンでも再び優勝しています。これは、女子マラソンにおける国際マラソン級の大会での最短間隔での連続優勝記録として特筆されます。

幼少期と競技への道

周春秀は、河南省南西部の農村にある貧しい家庭に生まれました。通っていた小学校は、校庭に墳墓があるなどスポーツをする環境が整っておらず、運動用具もほとんどありませんでした。しかし、体育教師の竇宏偉は、長距離を走っても息切れしない周春秀の様子を見てその才能を見抜き、「練習して田舎を出るんだ。このままでは両親の農業を継ぐだけになるぞ」と、競技者としての道を強く勧めました。

運動着や靴を買う余裕がなく、いつも同じ服を着ていた周春秀は、周囲からからかわれることもありました。地元の体育関係者からも見向きもされない状況でしたが、竇宏偉は彼女を励まし続け、「自分の力で現状を変えようと思いなさい」と諭しました。竇宏偉の期待通り、周春秀はめきめきと実力を伸ばし、11歳の時には地元の体育隊に参加。出場した南陽市小学生陸上競技大会の1500mで2位という成績を収めます。この結果が楊友華コーチの目に留まり、南陽市体育学校への推薦入学へとつながりました。

その後、股関節の故障に見舞われリハビリを強いられる時期もありましたが、2001年には江蘇省陸上競技チームに移籍し、練習を再開しました。後に蘇州市に戸籍を移しています。初マラソンでの優勝、アテネオリンピックへの出場、アジア大会での優勝など、彼女は着実に階段を駆け上がっていきました。

彼女の活躍は、故郷の家族にも大きな変化をもたらしました。平屋だった実家は、彼女の稼ぎによって2階建てに建て替えられました。アジア大会で優勝し凱旋帰郷した際には、母校を訪ねて恩師の竇宏偉と再会し、「ここまで来られたのは先生のおかげです。先生がいなければ、今もこの村にいたと思います」と感謝の言葉を伝えています。

周春秀は、逆境にめげず、強い意志と才能で世界の舞台へと駆け上がり、中国女子マラソン界に新たな歴史を刻んだ選手です。

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