呪われし地球人たちへ

マグマ『呪われし地球人たちへ』

マグマが1973年に発表したサード・スタジオ・アルバム『呪われし地球人たちへ』は、その正式名称を『Mëkanïk Dëstruktïẁ Kömmandöh』といい、通称『MDK』として知られています。この作品は、彼らが創造した架空の惑星コバイアを巡る壮大な物語「トゥーザムターク三部作」の最終章を飾る位置づけにあります。

リリース当時の商業的な成功は限定的でしたが、その類稀なる独創性と音楽的な完成度は批評家から高く評価され、今日ではマグマのディスコグラフィの中で最も広く認知され、しばしばバンドの最高傑作の一つとして挙げられる重要な作品となっています。

音楽性と構成

本作の楽曲は、全てバンドの中心人物であるドラマー兼ボーカリストのクリスチャン・ヴァンデによって作詞・作曲されました。音楽的な最大の特徴は、アルバム全体が切れ目なく演奏される一つの壮大な組曲として構成されている点です。複数のトラックに分かれて収録されていますが、実質的には全編を通して一つの物語、一つの音楽的な流れを形成しており、バンド独自の音楽スタイルである「ゼール」の真髄がここにあります。

歌詞の多くは、ヴァンデが創造した架空の言語「コバイア語」で歌われています。地球の破滅とコバイア人による救済という、三部作を通じて語られてきたテーマが本作でクライマックスを迎えます。

収録曲

組曲は以下のパートから構成されています。括弧内はかつて用いられた邦題の旧訳です。

1. 普遍界からの声（呪われし人種、地球人） - Hortz Fur Dëhn Štekëhn ဎešt （9:36）
2. 天使が私に微笑んだ（永遠の黙示あらば） - Ïma Süri Dondaï （4:30）
3. 創造主たる永遠（惑星コバイア） - Kobaïa Is de Hündïn （3:34）
4. 祓魔の歌（賛美歌） - Da Zeuhl ဎortz Mëkanïk （7:48）
5. 指導者ネベー・ギュダット（救世主「ネベア・グダット」） - Nebëhr Gudahtt （6:02）
6. 呪われし地球人類の浄化（地球文明の崩壊） - Mëkanïk Kömmandöh （4:10）
7. クルン・コーゥマン神（森羅万象の聖霊） - Kreühn Köhrmahn Ïss Dëh Hündïn （3:13）

これらのパートは独立した楽曲というよりは、組曲を構成する楽章として機能しており、全体で約38分間の音楽的な体験を提供します。

参加ミュージシャン

本作の録音には、マグマの重要なメンバーたちが参加しました。

クリスチャン・ヴァンデ (Christian Vander): ドラム、ボーカル、オルガン、パーカッション
ヤニック・トップ (Jannick Top): ベース
クラウス・ブラスキス (Klaus Blasquiz): ボーカル、パーカッション
ジャン=リュック・マンドゥリエ (Jean-Luc Manderlier): ピアノ、オルガン
ルネ・ガルベ (René Garber): ベース、クラリネット、ボーカル
クロード・オルモス (Claude Olmos): ギター
ステラ・ヴァンデ (Stella Vander): ボーカル
テディ・ラスリー (Teddy Lasry): ブラス、ボーカル、フルート

特にクリスチャン・ヴァンデ、ヤニック・トップ、クラウス・ブラスキスといった中心メンバーに加え、オルガンを巧みに操るジャン=リュック・マンドゥリエ、そして重要な女性ボーカルを務めるステラ・ヴァンデらが、この独特なサウンドを生み出す上で不可欠な役割を果たしています。

歴史的意義

『呪われし地球人たちへ』は、マグマの提唱する「ゼール」という音楽スタイルを最も純粋かつ強力な形で体現した作品として位置づけられています。オペラティックなボーカル、ジャズや現代音楽の影響を受けた複雑なリズムとハーモニー、そしてコバイアという独自の宇宙観が見事に融合しており、その後の多くのプログレッシブ・ロックや実験音楽アーティストに影響を与えました。現在に至るまで、マグマのライブにおける中心的レパートリーであり続けており、彼らの芸術性を理解する上で避けて通ることのできない傑作と言えるでしょう。

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