ヤニック・トップ

フランス、マルセイユで1947年 10月4日に生を受けたヤニック・トップは、卓越した才能を持つベース奏者であり、作曲家です。エレクトリックベースとチェロという二つの弦楽器を自在に操り、特にそのダイナミックかつ独創的なベースプレイは、多くの音楽ジャンルにおいて重要な足跡を残しています。

彼のキャリアにおいて最も影響力のある時期の一つは、1970年代に伝説的なプログレッシブ・ロックバンド、マグマの主要メンバーとして活動したことです。ドラマーのクリスチャン・ヴァンデ、ヴァイオリニストのディディエ・ロックウッドらと共に、彼はマグマ独自の音楽世界である「ズール」サウンドの構築に深く関わりました。複雑なリズム構造、予測不能な展開、そして宇宙的なスケールを持つこのユニークな音楽性は、ヤニック・トップの革新的なベースラインによって支えられていました。この時期に制作されたアルバム、例えば『呪われし地球人たちへ（Mekanïk Destruktïw Kommandöh）』、『コンタルコス（Köhntarkösz）』、『未来からの鼓動 - ウドゥ・ヴドゥ（Üdü Ẁüdü）』などは、彼の参加したマグマの代表作として、現在もなお多くの音楽ファンに聴き継がれています。

マグマを離れた後、彼は1977年から1980年にかけて、人気の電子音楽プロジェクト「スペース」に参加しました。ここでは、それまでの実験的なサウンドとは異なる、よりシンセサイザーを多用したポップでダンサブルな音楽性の中で、新たな側面を見せました。代表作である『マジック・フライ』などがこの時期にリリースされています。

スペースでの活動を経て、ヤニック・トップはさらに多様な音楽シーンへと活躍の場を広げます。ミッシェル・ベルジェ、フランス・ギャル、リッカルド・コチャンテ、ボニー・タイラー、ユーリズミックス、レイ・チャールズ、セリーヌ・ディオンといった、ロック、ポップ、ソウルなど、ジャンルを超えた数多くの著名アーティストたちのレコーディングセッションに参加し、その卓越した演奏技術と柔軟性を示しました。彼の参加は、それぞれの楽曲に深みと独自のグルーヴをもたらしました。

また、彼はライブパフォーマンスの分野でも重要な役割を担いました。フランスを代表するロッカー、ジョニー・アリディのバンドメンバーとしてツアーに参加したり、大ヒットしたロック・オペラ『スターマニア』を含む様々な舞台公演において、単なる演奏者としてだけでなく、音楽監督としてもその才能を発揮しました。

さらに、キーボード奏者のセルジュ・ペラトネとの協力関係を通じて、映画や広告のための音楽制作も手がけています。映像作品に合わせた作曲やアレンジメントでも、彼の持つ幅広い音楽性が活かされています。

ヤニック・トップは、リーダー作や共同プロジェクト名義でも作品を発表しています。ヴァンデ、トップ、ブラスキス&ガルべ名義の『Sons』、STS名義の『Système Solaire』や『Paris 98』、Eric Le Lann & Jannick Top名義の作品など、彼のソロやプロジェクトにおける探求心は尽きることがありません。また、マグマ時代の未発表ライブ音源なども継続的にリリースされており、彼のキャリアの全体像が明らかになっています。

半世紀以上にわたるキャリアを通じて、ヤニック・トップは常に音楽的な境界線を押し広げ、ベースという楽器の可能性を探求し続けてきました。プログレッシブ・ロックの最前線から、ポップミュージック、舞台、映像音楽まで、その活動範囲は非常に広く、フランス音楽界のみならず、世界の音楽シーンに与えた影響は計り知れません。彼の音楽は、その卓越した技術、深い表現力、そして何よりも尽きることのない創造性によって、今なお多くのリスナーに新たな発見と感動を与え続けています。

主な作品

リーダー・アルバム/プロジェクト名義

Sons (Document 73) (1993年) ※ヴァンデ、トップ、ブラスキス & ガルべ名義
Système Solaire (1997年) ※STS（ヤニック・トップ、エリック・セヴァ、クロード・サルミエーリ）名義
『オルクの太陽』 - Soleil d'Ork (2001年)
『ナンシー 75』 - Nancy 1975 (2001年) ※ユートピック・スポラディック・オーケストラ名義
『パリ・ルネッサンス 76』 - Paris 76 (2001年) ※マグマ（ヴァンデ＝トップ）名義
『ベスト・オン・ツアー 76』 - Best On Tour 76 (2001年) ※マグマ（ヴァンデ＝トップ）名義
『パリ 80』 - Paris 80 (2001年) ※フュージョン名義
『パリ 98』 - Paris 98 (2002年) ※STS名義
Live 2000 (2004年) ※STS名義
Le Lann Top (2007年) ※Eric Le Lann & Jannick Top名義
Infernal Machina (2008年)

マグマ

『呪われし地球人たちへ』 ‐ Mekanïk Destruktïw Kommandöh (1973年)
『コンタルコス』 - Köhntarkösz (1974年)
『未来からの鼓動 - ウドゥ・ヴドゥ』 ‐ Üdü Ẁüdü (1976年)
『ズーン・ウォル・ウンザイ - ライヴ1974』 - Zühn Wöhl Ünsaï - Live in Bremen (2014年)

参加アルバム

スペース : 『マジック・フライ』 - Magic Fly (1977年)
* ミシェル・ポルタル : Turbulence (1987年)

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