呪われた者たち

呪われた者たち：核の影と子供たちの運命

1963年、イギリスで公開されたジョゼフ・ロージー監督の映画『呪われた者たち』(原題: The Damned)は、異色のSFホラーとして知られています。アメリカ合衆国での公開タイトルは『These Are the Damned』。赤狩りを逃れてイギリスに亡命したロージー監督が、ハマー・フィルム・プロダクションで制作した本作は、公開当時、その斬新なテーマと衝撃的な描写から大きな反響を呼びました。しかし、製作から2年後の公開となり、日本では劇場公開どころか、ビデオやDVD化もされておらず、知る人ぞ知る作品となっています。WOWOWでの放送が、日本で唯一本作を視聴できた機会と言えるでしょう。

物語は、アメリカ人観光客サイモンと、地元の不良グループのリーダー・キングの妹ジョーンの出会いを軸に展開します。2人はキングの怒りを買い、命を狙われる身となります。逃亡の末、崖から海に落ちた2人を救ったのは、洞窟内の謎めいた施設で暮らす9人の子供たちでした。しかし、子供たちの肌は異常に冷たく、彼らを取り巻く状況には不穏な影が潜んでいます。

施設で暮らす子供たちは、放射能を帯びた母体から生まれた、いわば「核戦争後の世界を生き抜く新しい人類」として、政府によって秘密裏に育てられていました。外界から隔離され、英才教育を受けながら、彼らの存在は厳重に管理されていました。サイモンとジョーンは、子供たちを救い出そうとしますが、子供たちの持つ放射能の危険性を知ることになります。

子供たちを救出するために奔走するサイモン、ジョーン、そして後に施設にたどり着いたキング。しかし、彼らの行動は、政府による厳しい対応を招きます。子供たちと接触したことで高レベルの放射線を浴びた3人は、やがて死を迎えることになります。サイモンとジョーンは船で爆破され、キングは車で橋から転落死。事態の発覚を防ぐため、政府は徹底的な隠蔽工作を行います。

一方、施設の責任者であるバーナードは、秘密を共有していた芸術家フレイアに事情を説明し、協力を求めます。しかし、フレイアは自身の命を犠牲にしてでも真実を貫くことを選び、バーナードは彼女を射殺します。

岬には、救いを求める子供たちの叫び声が虚しく響き渡り、物語は幕を閉じます。このラストシーンは、核戦争の脅威と、人間の傲慢さ、そして子供たちの未来への不安を象徴的に描いています。

マクドナルド・ケリー演じるサイモン、シャーリー・アン・フィールド演じるジョーン、そしてオリヴァー・リード演じるキングなど、個性豊かな俳優陣の演技も本作の魅力の一つです。また、監督の意図とは別に、公開時に大幅にカットされたことや、Rotten TomatoesやMetacriticで高い評価を得ていることも注目に値します。

『呪われた者たち』は、単なるSFホラーにとどまらない、人間の業と未来への問いかけを込めた、深みのある作品です。劇場未公開、ビデオ・DVD化もされていない希少な作品ですが、その衝撃的なストーリーと高い評価は、多くの映画ファンを魅了し続けています。核戦争という暗いテーマ、そして政府による秘密の実験という現実離れした設定にも関わらず、登場人物たちの葛藤や悲劇的な結末は、見る者の心に深く刻まれるでしょう。

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