呼吸上皮

呼吸上皮の概要

呼吸上皮は、呼吸器系の大部分を内側から覆う線毛円柱上皮の一種であり、主に気道の湿潤化と保護の役割を果たしています。この上皮は、気道の感染を防ぐために、物理的なバリアを形成し、粘液を分泌することで、外部からの病原体や異物を捕捉します。

解剖学的構造

呼吸上皮は主に上気道の内壁を構成しており、偽重層線毛円柱上皮として分類されます。実際には、すべての細胞が基底膜に接触していますが、細胞の核の配置が異なっているため、層があるように見えます。このため「偽重層」と命名されています。呼吸上皮は下方に進むと単層線毛立方上皮に移行し、肺胞管や肺胞では単層扁平上皮に変わります。

主な細胞種

呼吸上皮には、主に以下の5種類の細胞が存在します：
1. 線毛細胞：特殊な線毛を持ち、呼吸上皮の50〜80%を占める細胞です。
2. 杯細胞：粘液を分泌する役割を持ち、下方に位置するほど数が減少します。
3. 刷子細胞：微絨毛を持つ独特な細胞で、線毛細胞の間に位置しています。
4. 基底細胞：立方体状の小さな細胞で、他の上皮細胞に分化します。
5. 小顆粒細胞：主に神経内分泌細胞として機能します。

このように、呼吸上皮は多様な細胞から構成され、それぞれが気道の機能を維持するために協力しています。

呼吸上皮の機能

呼吸上皮の主な役割は、気道を湿潤化し、保護することです。病原体に対して物理的なバリアを形成するだけでなく、粘膜線毛クリアランス機構によって異物を除去する作用も持っています。

粘液と線毛の役割

線毛細胞により構成される粘膜線毛クリアランス機構は、毎秒10回から20回の速度で波打ち、呼吸器内の異物を咽頭の方へ押し上げています。これにより、気道からの不純物や病原体の除去が促進されます。また、杯細胞の分泌する粘液は、上皮を湿潤に保ち、病原体や微細な粒子を捕集する役目を果たします。クラブ細胞も同様の機能を持っていますが、より末梢の気道で役立っています。

基底細胞の役割

基底細胞は他の上皮細胞に分化することで、損傷した呼吸上皮を修復し、正常な機能を回復させる重要な役割を担っています。また、分化した細胞が再び幹細胞へと戻る可能性もあり、細胞のバリア機能の修復に寄与しています。

臨床的意義

上皮細胞の長期的な刺激は、粘液過剰産生を引き起こし、慢性気管支炎などの病状を引き起こすことがあります。さらに、肺の神経内分泌細胞は、慢性肺疾患や小細胞肺がんの発症にも関与しています。これらすべては、呼吸上皮の健康が全身の健康にとっても重要であることを示しています。呼吸上皮は我々の身体にとって欠かせない存在であり、その機能と構造を理解することが、呼吸器系の疾患の予防や治療に繋がるでしょう。

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