和と洋

AIの11枚目のスタジオ・アルバム『和と洋』は、2017年6月7日にユニバーサルミュージックから発売されました。このアルバムは、AIが母親となって初めて発表する4年ぶりのオリジナル・アルバムであり、彼女の音楽的なルーツを深く掘り下げた作品となっています。

アルバムの最大の特徴は、タイトルにもあるように「和」と「洋」の融合です。ロサンゼルス生まれ、鹿児島育ちというバイリンガルであるAI自身の生い立ちとバックボーンを反映し、日本語詞の「和-DISC」と英語詞の「洋-DISC」の2枚組で構成されています。この和洋折衷のコンセプトは、様々なジャンルの音楽を自由に表現し、国境やシーンの垣根を越えて活動するAIの姿を象徴しています。

参加アーティストも豪華で、日本からは佐渡島を拠点とする太鼓芸能集団・鼓童、東北を拠点に活動する姫神/星吉紀、ネットラップシーンを牽引するラッパーのJinmenusagiが参加。海外からは、グラミー賞シンガーのクリス・ブラウン、レゲエ界のキーパーソンであるジュニア・リード、ジャスティン・ビーバーの楽曲を手がけたエリック・ベリンジャーが名を連ねています。

「和-DISC」では、鼓童の力強い演奏や、AIが敬愛する姫神の楽曲をサンプリングするなど、日本の伝統音楽とR&Bやヒップホップとの融合を試みています。また、日本のゲームやアニメをイメージした電子音も取り入れ、現代的な要素も加えています。一方、「洋-DISC」では、J-POPから距離を置き、1990年代から2000年代初頭のR&Bを彷彿とさせる本格的なブラックミュージックを展開しています。

アルバムには、テレビ朝日系木曜ドラマ「緊急取調室シーズン2」の主題歌「最後は必ず正義が勝つ」や、GLOBAL WORKのテレビCMソング「FEEL IT」など、タイアップ曲も多数収録されています。また、同年10月25日には、その後に発表されたタイアップ曲や未発表新録曲などを加えた豪華盤『和と洋と。DELUXE EDITION』もリリースされました。このデラックスエディションには、AIと渡辺直美のデュエット曲「キラキラ feat.カンナ」（TBS系火曜ドラマ「カンナさーん!」主題歌）や、映画「パディントン2」の日本版主題歌「Little Hero」など、7曲のボーナストラックが収録されています。

アルバムのアートワークは、イギリス在住のアートディレクター、ケイト・モロスが手掛けています。彼女は、リード曲「最後は必ず正義が勝つ」のミュージックビデオで、日本のゲーム文化をモチーフにした8ビットビジュアルのアニメーションを使用し、楽曲のボーダーレスなサウンドを視覚的に表現しました。また、「キラキラ feat. カンナ」のミュージックビデオでは、AIと渡辺直美が自由に歌い踊る様子が全編グラフィックで表現されています。

初回プレス分には、AIの衣装の切れ端が封入されるというサプライズもありました。『和と洋』は、AIの音楽的な多様性と、彼女自身のルーツへの深い愛情が込められた、聴きごたえのあるアルバムです。

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