和田夏十

和田夏十の生涯と業績

和田夏十（わだ なっと）は、1920年9月13日に兵庫県姫路市で生まれました。本名は市川由美子（いちかわ ゆみこ）で、旧姓は茂木（もぎ）です。彼女は日本の映画界において重要な存在である脚本家として知られる一方、映画監督の市川崑の妻でもあります。

学歴とスタート

東京女子大学の英文科を卒業した後、和田は戦後間もなく東宝撮影所で通訳として働き始めました。そこでの仕事を通じて、彼女は市川崑と出会いました。市川は当時、東宝争議において組合離脱派に属しており、同様に離脱派だった茂木と意気投合しました。二人とも初婚に失敗していたことから、映画の成功を条件に結婚する約束を交わします。

市川は1948年に新東宝撮影所へ移り、デビュー作『－「眞知子」より－ 花ひらく』を完成させ、同年の4月10日に和田と結婚しました。結婚式は映画の業界人が集う中で和やかに行われました。この後、彼女は35年にわたり市川を支え続け、脚本家としても多くの作品に関わりました。

ペンネームの由来

和田夏十という名は、彼女が市川と共同で脚本を書くために考案したペンネームです。「和田」は、茂木がNHKのアナウンサーである和田信賢のファンであることから取られ、「ナット」は市川が英国の俳優ロバート・ドーナットを好んでいたことに由来しています。茂木は女性名だと批評が甘くなることを嫌い、男性名を選びました。初めて映画にクレジットされたのは1949年に公開された『人間模様』であり、その後、彼女の作品は多岐にわたります。

芸術における貢献とスタンス

和田は市川の作品が高く評価される際には、常に自らの貢献を認識されることを望んでいました。彼女は市川の脚本と監督の成果を支え、両者の関係は単なる夫婦や同僚を超えた、「同志」のような深い絆で結ばれていました。市川はその作品が称賛されると、「それは、夏十さんの功績です」と答えるのが常でした。

また、和田は市川以外の監督の作品にはほとんど関与せず、特に西村保造による『足にさわった女』のリメイクや、田中絹代の依頼を受けて手掛けた『流転の王妃』など、特定の作品に限って脚本を執筆しました。彼女の信念に基づき、他の監督との作品にはあまり関わりを持たなかったのです。

プライベートと健康

子育てに対する哲学も独特で、和田は添い寝をせずに子供を一人で寝かせるスタイルを大切にしていました。市川がそれに疑問を持つと、和田は「これは子供のために最良の方法です」と語っていました。また、彼女は自身の健康状態が悪化し、乳がんとの闘病生活を余儀なくされるまで精力的に活動していました。

18年の闘病生活の末、和田は1983年2月18日に62歳で亡くなりました。葬儀は東京都の教会で行われ、多くの著名人が参列し、彼女の業績がしっかりと認識される場となりました。

まとめ

和田夏十は、日本映画界において多大な影響を与えた人物であり、市川崑との深い関係性が彼女の脚本活動においても重要な役割を果たしました。彼女の作品は、今でも多くの人々に愛されており、その存在は市川映画に欠かせない一部として記憶されています。

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