ロバート・ドーナット

ロバート・ドーナット 

ロバート・ドーナット（Robert Donat、1905年3月18日 - 1958年6月9日）は、イギリス・マンチェスター・ウィシントン出身の著名な舞台および映画俳優です。彼は、その端正で上品な容姿から主にイギリスを舞台とした作品で活躍し、特に1939年度のアカデミー主演男優賞を受賞したことで知られています。彼の家族にも俳優がいて、甥のピーター・ドゥナットも俳優として活動しています。

略歴 

ドーナットは、1921年に16歳で初めて舞台に立ち、1932年に映画デビューを果たしました。その年の作品であるチャールズ・ロートン主演の『ヘンリー八世の私生活』では、彼の演技が高く評価されました。次の年にはアルフレッド・ヒッチコック監督の『三十九夜』に出演し、洗練された英国紳士としてのイメージを確立します。ヒッチコック監督はその後の作品でもドーナットを起用しようとしましたが、実現しませんでした。

以降も、フランスのルネ・クレールが手がけた『幽霊西へ行く』やジャック・フェデーが監督した『鎧なき騎士』など、さまざまな映画に出演しました。1938年には映画『城砦』でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、翌1939年には『チップス先生さようなら』の出演によりアカデミー主演男優賞を受賞。ただし、受賞後は舞台を中心に活動し、慢性的な喘息に悩まされたため、キャリアの割には映画出演本数はわずか20本に留まりました。

ハリウッドとの関係

ドーナットはハリウッドには消極的で、自身が出演した映画の中でアメリカに渡ったのは1934年の『巌窟王』のみです。それ以外のハリウッドからの出演依頼は断っており、『ロミオとジュリエット』なども含まれます。彼の喘息は俳優としての活動にも影響を及ぼし、主演が決まっていた『海賊ブラッド』はエロール・フリンが代役を演じることになりました。また、『鎧なき騎士』では撮影の途中で体調を崩し入院したため、撮影が2ヶ月も延期されてしまいました。デヴィッド・リーン監督の『ホブスンの婿選び』でも主役を務める予定でしたが、病状悪化のため降板せざるを得なくなりました。伝記作家のデビッド・シップマンは、彼の喘息が心身症であった可能性を指摘しています。

晩年と遺作

ドーナットは舞台と映画での活躍を続けましたが、ついに1958年に制作された映画『六番目の幸福』が彼の遺作となります。同年の6月9日、彼はロンドンで53歳という若さでこの世を去りました。彼の影響を受けた脚本家の和田夏十は、ペンネームの「夏十」をロバート・ドーナットに由来させたという話も知られています。

ロバート・ドーナットは、いまだ多くの人々に愛され続け、その豊かな演技力と独自の魅力で映画史に名を刻んでいます。

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