和田悟朗

和田悟朗（わだ ごろう）は、1923年6月18日に兵庫県で生まれ、2015年2月23日に91歳で生涯を閉じた俳人であり、物理化学者です。大阪大学理学部を卒業後、神戸大学理学部助教授、奈良女子大学理学部教授を経て、奈良女子大学名誉教授となりました。専門は物理化学であり、その知識と感性を俳句の世界にも生かしました。

俳句は1952年より始め、橋閒石の「白燕」に参加し、後に同人となりました。高柳重信の「俳句評論」、赤尾兜子の「渦」同人を経て、1992年からは「白燕」の同人代表を務めました。また、現代俳句協会関西地区会議議長、現代俳句協会副会長を経て、2004年3月より同協会顧問に就任するなど、俳句界における要職を歴任しました。2010年には自ら「風来」を創刊し、主宰として後進の育成にも尽力しました。

和田の句の特徴は、時間、地球、宇宙、次元といった自然科学的な概念語を巧みに用い、それらを大きなスケールで捉え、表現している点にあります。1995年の阪神・淡路大震災で自宅が全壊した際には、「寒暁や神の一撃もて明くる」という句を詠み、その時の心情を表現しました。

受賞歴も多数あり、1969年には第16回現代俳句協会賞、2007年には第7回現代俳句大賞を受賞しています。さらに、2013年には句集『風車』により第64回読売文学賞詩歌俳句賞を受賞しました。その他、兵庫県文化賞、大阪文化芸術功労賞など、数々の賞を受賞しています。1999年には、長年の功績が認められ、勲三等旭日中綬章を受章しました。

著書には、句集として『七十万年』、『現』、『山壊史』、『諸葛菜』、『櫻守』、『法隆寺伝承』、『少間』、『即興の山』、『坐忘』、『人間律』、『風車』などがあります。選句集には『和田悟朗句集』、『舎密祭』があり、評論・随筆には『現代の諷詠』、『俳句と自然』、『活日記』、『俳句文明』、『時空のささやき』などがあります。また、共著・編纂として『放射化学及放射線保健学』、『現代物理化学講座 第8 溶液の性質 第2』、『生活の化学』、『赤尾兜子の世界』、橋閒石『俳諧余談』などがあります。翻訳書としては、ノイツィル『教養の化学』があります。

参考文献としては、金子兜太編『現代の俳人101』、坂口昌弘著『平成俳句の好敵手』、稲畑汀子、大岡信、鷹羽狩行監修『現代俳句大事典』などが挙げられます。

和田悟朗は、科学者としての知性と俳人としての感性を併せ持ち、その独自の視点から数々の名句を生み出し、後世に大きな影響を与えた人物と言えるでしょう。

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