咸鏡北道 (日本統治時代)

咸鏡北道（ハムギョンブクト）

咸鏡北道は、日本統治下の朝鮮半島に存在した行政区画の一つで、現在の北朝鮮の咸鏡北道、羅先特別市、および両江道の一部を含む地域です。その歴史、地理的特徴、そして社会経済的な側面について詳しく見ていきましょう。

地理と概要

咸鏡北道は、朝鮮半島の東北部に位置し、咸鏡道地方の北東側にあたります。南西は咸鏡南道と接し、北には豆満江を挟んで満州（現在の中国東北部）と国境を接していました。さらに、北東はロシア（当時はソビエト連邦）とも接する国境地帯であり、戦略的に重要な位置にありました。道庁は当初、鏡城に置かれていましたが、1920年以降は羅南に移転しました（1940年に清津府に編入）。

この地域は、1930年代に天然資源の開発が活発化し、特に日本が支配する満洲国への短絡路として、羅津港の築港をはじめとする開発が進められました。羅南には、日本軍の第19師団が配置され、軍事的な重要性も高まっていました。

人口構成

昭和11年（1936年）の調査によると、咸鏡北道の総人口は813,893人でした。その内訳は、内地人（日本人）が45,433人、朝鮮人が762,071人、その他が6,389人でした。この人口構成は、当時の朝鮮半島における日本人の存在と、多様な民族が共に暮らしていた状況を示しています。

行政区分

昭和20年（1945年）当時、咸鏡北道は以下の行政区分に分かれていました。

府：清津府、羅津府、城津府
郡：
鶴城郡：鶴中面、鶴西面、鶴南面、鶴上面、鶴東面
吉州郡：吉州邑、東海面、徳山面、長白面、雄坪面、暘社面
明川郡：上雩北面、上雩南面、下雩面、西面、東面、阿間面、上加面、下加面、下古面、上古面
鏡城郡：朱乙邑、漁大津邑、鏡城面、朱北面、朱南面、漁郎面
富寧郡：富寧面、西上面、石幕面、青岩面、連川面、富居面、三海面、観海面
茂山郡：茂山邑、東面、漁下面、延上面、延社面、三社面、三長面、西下面、永北面、豊渓面
会寧郡：会寧邑、碧城面、八乙面、花豊面、甫乙面、昌斗面、龍興面
鍾城郡：鍾城面、南山面、行営面、龍渓面、華方面、豊谷面
穏城郡：穏城面、南陽面、永瓦面、永忠面、美浦面、訓戎面
慶源郡：慶源面、安農面、東原面、龍徳面、有徳面、阿山面
慶興郡：雄基邑、阿吾地邑、豊海面、慶興面、蘆西面

司法と治安

咸鏡北道には、司法機関として清津地方法院とその支庁が設けられていました。治安維持のため、警察署も各所に配置されており、憲兵隊も駐屯していました。

法院（裁判所）：清津地方法院、清津地方法院城津支庁、清津地方法院会寧支庁、清津地方法院雄基支庁
刑務所：清津刑務所
警察：咸鏡北道警察部、清津警察署、羅南警察署など、多数の警察署が配置
憲兵隊：鏡城憲兵隊、羅南憲兵分隊など、各地に憲兵部隊が駐屯

税務と林政

税務機関として清津税務署や雄基税務署が設置され、税関としては羅津税関とその支署がありました。また、林政を管轄する城津営林署も置かれていました。

税務署：清津税務署、雄基税務署
税関：羅津税関、羅津税関清津税関支署
林政：城津営林署

気象観測

咸鏡北道には、気象観測を行う施設として、城津測候所、清津測候所、雄基測候所が設置されていました。

気象：城津測候所、清津測候所、雄基測候所

軍事

咸鏡北道は国境地帯であり、軍事的な重要性が高かったため、多くの日本軍部隊が駐屯していました。特に羅南には第19師団をはじめとする多くの部隊が配置されていました。

日本軍駐屯地：羅津要塞司令部、高射砲第5連隊、第19師団、歩兵第73連隊など

交通

咸鏡北道には、鉄道網が整備されており、総督府鉄道や南[[満洲鉄道]]などが重要な役割を果たしていました。また、道路網も整備されており、主要都市を結んでいました。港湾も整備されており、物資の輸送や貿易に利用されていました。

鉄道：咸鏡線、恵山線、白茂線、茂山線など
道路：元山会寧線、会寧行営線、吉州茂山線など
港湾：雄基港、清津港、城津港、羅津港など

鉱業と産業

咸鏡北道は、豊富な鉱物資源に恵まれており、多くの鉱山が開発されていました。また、農林水産業も盛んであり、多くの企業が進出していました。

鉱山：鶏林炭鉱、会寧炭鉱、茂山鉱山など
主要企業：北鮮土地、井川工業、秋田水産工業、日鮮鉱業など

神社

咸鏡北道には、各地に神社が建立され、日本人の精神的な拠り所となっていました。

神社：羅南神社、清津神社、城津神社、会寧神社など

メディア

咸鏡北道には、ラジオ放送局や日本語新聞社が存在しており、情報の発信が行われていました。

ラジオ放送局：朝鮮放送協会清津放送局、朝鮮放送協会城津放送局
日本語新聞：北鮮日報、北鮮日日新聞

出身有名人

咸鏡北道出身の著名人として、金策（朝鮮人民軍司令官）や延亨黙（北朝鮮国防委員会副委員長）などがいます。

* 出身有名人：金策、延亨黙

まとめ

咸鏡北道は、日本統治下の朝鮮半島において、重要な役割を果たした地域でした。国境地帯としての軍事的な重要性、豊富な資源、そして多様な産業が展開され、多くの人々が生活していました。その歴史は、現代の朝鮮半島を理解する上で重要な視点を提供しています。

もう一度検索