品川勝島倉庫爆発火災

品川勝島倉庫爆発火災

1964年7月14日、東京都品川区勝島で発生した倉庫爆発火災は、危険物の不適切な管理が招いた悲劇でした。この事故は、19名の尊い命を奪い、危険物管理に関する法令改正の契機となりました。

事故の概要

午後9時55分頃、勝島1丁目の寶組倉庫で、ニトロセルロースを保管していたドラム缶から出火。火は瞬く間に倉庫内に広がっていた無許可のアルコール類やアセトンなどの危険物に引火し、大火災となりました。東京消防庁は直ちに消火活動を開始しましたが、午後10時55分頃、鎮火しかけたところで、12号倉庫に無許可で保管されていたメチルエチルケトンパーオキサイドが爆発。この爆発により、隣接する10号倉庫が倒壊し、多数の消防隊員が下敷きとなり殉職しました。

この事故では、消防車両173台、消防職員1195名、消防団員381名が動員される大規模な消火活動が行われました。しかし、火災発生から約3時間半後の翌15日午前1時38分にようやく鎮火。首都高速道路も一時通行止めになるなど、広範囲に影響が及びました。

事故の背景

火災の原因は、倉庫に保管されていたニトロセルロースの自然発火でした。当時、東京オリンピックを控えていたため、塗料の原料としての需要が高まり、ニトロセルロースの保管量が増加していました。事故の4日前には、消防署の査察で屋外にニトロセルロースが野積みされていることが判明し、撤去指導が行われていました。しかし、寶組は撤去指導に従わず、逆に保管量を増やしたのです。また、ドラム缶の再密封が不完全だったため、ニトロセルロースが乾燥し、発火しやすい状態になっていたと推測されています。

さらに、12号倉庫には、当初モーターオイルが保管されているとされていましたが、実際にはメチルエチルケトンパーオキサイドが無許可で貯蔵されていました。この薬品は衝撃で爆発する可能性のある危険物であり、この無許可保管が爆発を招いた要因の一つとなりました。

裁判

この事故の責任を問う裁判では、寶組の幹部と担当者が業務上失火や消防法違反の罪で逮捕されました。東京地裁は、寶組と幹部に有罪判決を下しましたが、控訴審で一部の罪が否定されました。最終的には、最高裁が上告を棄却し、有罪判決が確定しました。

事故の余波

事故の6日後には、寶組の守衛長が自殺するという痛ましい出来事も起こりました。この事故は、危険物管理のあり方に大きな課題を突きつけ、その後の法令改正へと繋がっていきました。特に、メチルエチルケトンパーオキサイドのような危険物の無許可保管は、極めて危険な行為であり、二度と繰り返してはならないと強く認識されるようになりました。

教訓

この事故は、危険物の管理がいかに重要であるかを物語っています。特に、無許可での危険物保管や、安全管理の怠慢が、甚大な被害をもたらすことを示しました。また、消防隊員の犠牲は、消火活動における危険性を改めて認識させるものでした。この事故を教訓に、危険物の管理体制を徹底し、安全な社会を築いていく必要があります。

類似事例

2015年に中国・天津で発生した倉庫爆発事故では、一部報道で本件との類似性が指摘されました。これらの事例は、危険物管理の重要性を改めて認識させ、世界中で安全対策への意識を高める必要性を示唆しています。

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