唐棣色

唐棣色（はねずいろ）は、鮮やかな朱色に近い、オレンジがかった明るい赤色を指します。朱華（はねず）、唐棣花、棠棣とも書かれます。

由来

唐棣とは、庭梅（または庭桜）やザクロの花の古名です。この美しい花の色が、色の名前の由来となっています。

歴史

唐棣色は、古くから高貴な色として扱われてきました。日本書紀によると、天武天皇の時代には、親王や諸王の衣装の色として定められていました。天武天皇14年（687年）には、「秋七月‥‥浄位より已上は、並に朱華を着る‥‥」という記述があり、わずか3年間だけ、紫色の上に朱華の服を着用することが許されていました。

その後の養老律令では、黄丹（おうに）が親王の色とされ、現在の皇太子徳仁親王もこの色の衣装を着用されています。唐棣色は黄丹と非常に近いため、平安時代には禁色の一つとなっていました。禁色とは、特定の身分の者しか使用できない色のことで、唐棣色もその美しさから、一般の人が使用することを禁じられていたのです。

延喜式には、黄丹は紅花と梔子で染めると記載されており、おそらく唐棣色も同じ染料を使用し、配合比率を調整して染められていたと考えられます。黄色に赤色を加えることで、朱色系統の色合いに仕上がります。

文学

萬葉集巻第四には、大伴坂上郎女の有名な歌があります。

「思はじと言ひてしものを朱華色の移ろひやすきわが心かも」（657番歌）

この歌は、
「もう恋はしないと言ったのに、朱華色のように心が変わりやすい私だ」
という意味であり、唐棣色の持つ鮮やかさや儚さが、女性の心を表現するのに用いられています。

現代における唐棣色

現代では、唐棣色は伝統色の一つとして、着物や美術品、工芸品などに用いられています。また、その美しい色合いから、化粧品やファッションアイテムにも取り入れられています。

関連項目

色
色名一覧
* 日本の色の一覧

唐棣色は、その歴史的背景や美しい色合いから、日本の文化を彩る重要な色の一つと言えるでしょう。

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