唸る獣

唸る獣（Questing Beast）

唸る獣は、アーサー王伝説に登場する架空の生き物であり、その姿は非常に異様である。具体的には、頭部と尾がヘビ、胴は豹、尻はライオン、足は鹿という複数の動物の特徴を併せ持っている。この獣の名前の由来は、その独特な吠え声にあり、まるで30匹の猟犬が一斉に狩猟を行っているかのような唸り声を発することから、「唸る獣」と名づけられた。英語の「Questing Beast」は、その種の狩りに特化した猟犬としての意味合いが含まれており、フランス語では「glapissant」として知られる。

文献における歴史的背景

唸る獣に関する最初の文献は、13世紀に書かれた『ペルレスヴォー』や後期流布本の『Suite du Merlin』に登場する。この後者の作品は、トマス・マロリーによる『アーサー王の死』に影響を与え、物語の中でアーサー王が姉のモルゴースと関係を持ち、その間に生まれたモードレッドが王国を崩壊させることを暗示している。この中で、アーサー王は唸る獣が池で水を飲むシーンを見ることになる。

さらに、唸る獣はペリノア王やその子孫が狩ろうとする生物として位置づけられている。伝説によると、この獣は人間の王女から生まれたものであり、兄弟に対して近親相姦的な感情を抱いていた。この王女は、愛する子どもを持つことを約束する悪魔と交わるが、その結果、王女の兄は忌まわしい運命に遭うことになる。

豊かな象徴性

唸る獣は、近親相姦や暴力、混沌、さらにはアーサー王国の滅亡というテーマと強く結びついている。彼女の父親は、自分の娘を引き裂いた兄を罰するために犬を使ったという伝承があり、これが獣の凶暴な性質の根源とも見なされている。獣の存在は、王国の崩壊や人間の道徳的堕落の象徴とされ、それによって英雄たちの運命も大きく揺らぐ。

異なる描写

『ペルレスヴォー』における描写は著しく異なり、そこでは唸る獣は純白で、美しさが強調されている。また、著者はこの獣をキリストの象徴として描写しており、これは古代の法律を表すものとして解釈される。対照的に、13世紀の詩人ジェルベール・ド・モントイユは、獣を非常に大きい存在として描写し、神聖な場において無関心さを表す騒音を立てる存在としての側面を強調している。

また、サラセン人の騎士パロミデス卿も唸る獣の存在を追求するが、彼の冒険は成功に至らず、結果として多くの苦しみを味わうことになる。この物語の中で、パロミデス卿の改宗が描かれ、彼は無遠慮な冒険から解放されるが、最終的には獣によって命を奪われてしまう運命にある。物語のクライマックスでは、パーシヴァルやガラハッドが獣を湖に追いやることで物語の一つの区切りが訪れる。

唸る獣は単なる伝説の存在ではなく、アーサー王伝説の中での人間の欲望や道徳的葛藤を象徴する重要なキャラクターとして位置づけられている。

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