商品作物

商品作物とは

商品作物（しょうひんさくもつ）、または換金作物とは、自家消費ではなく市場での販売を目的として生産される農作物のことを指します。これに対し、自給自足のために生産される作物は、自給作物と呼ばれます。

概要

貨幣経済が発達し、市場が形成されるにつれて、自給自足のための作物を生産するよりも、商品価値の高い作物を生産して市場で販売し、その利益で生活に必要なものを購入する方が効率的になりました。これにより、農業生産は自給自足から市場での取引を前提としたものへと変化していきました。

商品作物の生産は、特に発展途上国においては重要な外貨獲得の手段となり、近代から現在に至るまで、多くの国々で国策として推進されています。しかし、特定の作物に依存しすぎると、市場価格の変動や自然災害などの影響を受けやすく、経済が不安定になるリスクも抱えています。

主な商品作物

商品作物は多岐に渡りますが、主な例として以下のようなものがあげられます。

コーヒー: 世界中で消費される嗜好品であり、多くの国で重要な輸出作物となっています。
ゴム: 工業製品の原料として不可欠であり、特にタイヤなどの製造に用いられています。
バナナ: 熱帯地域で栽培される果物であり、世界中で広く消費されています。
綿花: 衣服などの繊維製品の原料として使用され、多くの国で重要な作物です。
カカオ: チョコレートなどの原料であり、需要の高い作物です。
砂糖: 甘味料として使用されるだけでなく、様々な食品加工にも用いられます。
茶: 飲料として世界中で愛飲され、多くの国で栽培されています。

この他、違法ではありますが、アヘンケシも商品作物として栽培されている地域があります。

歴史

商品作物の歴史は、貨幣経済の発達と深く結びついています。以下に、日本と東南アジア・中南米における商品作物の歴史を概観します。

日本

江戸時代中期以降、木綿や菜種といった作物が商品作物として盛んに栽培されるようになりました。もともと、米も年貢として扱われる換金作物としての側面がありましたが、江戸幕府は当初、田畑勝手作禁止令を出し、商品作物の生産を制限していました。しかし、全国的な市場経済の発展により、商品作物の生産は結果として認められるようになりました。

明治時代になると、木綿、菜種、お茶などが主要な輸出商品となり、外貨獲得に貢献しました。これらの商品は、日本の近代化を支える重要な役割を果たしました。

東南アジア・中南米

これらの地域においては、商品作物は特に近代以降にその役割を大きくしました。プランテーションの発達により、外貨収入のほぼすべてを商品作物に頼る国家が出現し、「バナナ共和国」などと呼ばれるようになりました。これらの国々では、経済が特定の作物に依存しているため、市場価格の変動や自然災害などの影響を受けやすく、経済危機や飢饉が起こりやすい状況にありました。

また、これらの国々では、先進国や少数の多国籍企業が経済を支配している場合が多く、事実上の経済植民地であると問題視されています。労働者の低賃金や不当な労働環境、環境破壊などの問題も指摘されており、持続可能な生産体制を築くための国際的な協力が求められています。

関連項目

商品作物の生産は、国際的な貿易や経済構造と密接に関わっています。以下の用語は、商品作物を理解する上で重要な関連概念です。

比較優位: 各国が最も得意とする生産物に特化し、貿易を通じて相互に利益を得るという考え方。
自由貿易: 関税などの貿易障壁を撤廃し、国際的な貿易を促進する政策。
モノカルチャー: 特定の農作物に経済が依存している状態。経済の不安定性を招く可能性がある。

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