商品取引員

商品取引員とは

商品取引員とは、日本において商品先物取引の受託業務を行う企業のことです。有価証券取引における証券会社に相当する存在であり、金融商品取引法に基づき、厳しい規制の下で事業を行っています。

商品取引員を巡る状況

日本の商品取引員は、「商品先物取引法」に基づき、経済産業省と農林水産省の許可を得て事業を行っています。かつては、強引な勧誘や不当な取引が横行し、社会問題となることもありました。そのため、2004年の改正商品取引所法では、資産保全制度の拡充や勧誘ルールの強化、投資家保護の徹底などが盛り込まれました。

近年では、商品先物取引の低迷から、外国為替証拠金取引（FX取引）に参入する企業も見られます。また、委託手数料の自由化や個人情報保護法の施行、勧誘規制の強化など、事業環境は大きく変化しています。

不招請勧誘の禁止と緩和

2009年には、商品先物取引における「不招請勧誘」が禁止されました。これは、顧客の意向を無視した一方的な勧誘行為であり、業界のイメージ悪化を招いた要因の一つです。しかし、その後、規制緩和の動きも出てきました。

2015年には、一定の条件を満たす顧客に対しては、不招請勧誘を例外的に認める省令が定められました。具体的には、65歳未満で、年金生活者でなく、一定以上の年収または金融資産を有する顧客が対象とされました。

新しい勧誘ルール

国民生活センターは、商品先物取引の新しい勧誘ルールを公開しています。不招請勧誘が認められる条件として、

1. 65歳未満であること
2. 年金等生活者でないこと
3. 年収800万円以上、または金融資産2000万円以上

といった条件が定められています。

契約前には、リスクに関するテストが義務付けられ、契約後も14日間は取引が制限されるなどの措置が取られています。

商品取引員の現状

商品取引員の数は年々減少しており、特に2005年の法改正以降、その傾向が顕著です。また、商品先物取引業界は、過去の強引な勧誘によるイメージ悪化から、消費者からの信頼回復に苦戦しています。

近年では、金や原油などのコモディティを対象としたCFD取引も登場しており、個人投資家は、より手軽にこれらの商品に投資できるようになりました。これは、既存の商品取引員にとって、新たな競争相手となっています。

また、商品取引員は、自己資本規制比率を常に維持する必要があります。これは、金融機関の健全性を測る指標であり、規制値を下回った場合には、行政処分を受けることになります。

商品取引員からの撤退

多くの商品取引員が、事業環境の変化や経営難を理由に、業界から撤退しています。以下に、近年、商品取引業から撤退した企業の一例を示します。

2022年
今村証券
2021年
第一商品
KOYO証券
フジフューチャーズ

(その他、多数の企業が撤退)

海外先物取引のリスク

国内の商品先物取引業から撤退した企業やその元社員が、海外先物取引業者として活動するケースがあります。海外先物取引は、国内のような規制がないため、悪質な業者が紛れ込んでいる危険性があります。

商品取引員への行政処分

商品取引員に対しては、法令違反や不適切な行為があった場合に、業務停止や業務改善命令などの行政処分が下されます。以下に、近年、行政処分を受けた企業の一例を示します。

2020年
クリエイトジャパン
さくらインベスト
2010年
中部第一
サンワード貿易
フジトミ

(その他、多数の企業が行政処分を受けている)

まとめ

商品取引員は、日本の商品先物取引を支える重要な役割を担っていますが、過去の不祥事や規制強化、市場の変化などにより、厳しい状況に置かれています。投資家は、商品先物取引のリスクを十分に理解した上で、慎重に取引を行う必要があります。また、悪質な業者による勧誘や不当な取引には、十分注意する必要があります。

商品取引員一覧

2021年5月1日現在、日本商品先物取引協会に加入している国内商品市場取引を扱う主な取引員は以下の通りです。

アステム
AIゴールド証券
SBIプライム証券
岡地
岡安商事
クリエイトジャパン
クレディ・スイス証券
コムテックス
さくらインベスト
サンワード貿易
大起証券
日産証券
フィリップ証券
フジトミ
北辰物産
豊トラスティ証券

参考文献

会員の異動 日本商品先物取引協会
商品先物取引が変わります トラブルのない市場をめざして- 農林水産省 経済産業省
商品先物取引業者に対する行政処分を行いました さくらインベスト - 経済産業省（2020年6月10日）
クリエイトジャパン株式会社に対する行政処分について - 関東財務局（2020年（令和2年）11月27日）
ご存じですか？商品先物取引の勧誘ルールが変わります！　勧誘を受けても、取引の仕組みやリスクの大きさを理解できなければ契約しないで！ - 独立行政法人 国民生活センター（2015年5月28日）

関連項目

商品先物取引法
商品先物取引

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