問答法

問答法

問答法（もんどうほう、希: διαλεκτική、英: dialectic）は、古代ギリシャの哲学者ソクラテスが発展させた対話形式の手法で、相手に自らの矛盾や無知を認識させながら、より高次の真理を探求することを目的としています。この手法は、相手との対話を通じて概念の本質を明確にし、倫理的な理解を深めるために用いられました。特に、プラトンは『パイドロス』や『テアイテトス』などの作品で問答法と弁論術を対比しながら議論を展開し、「産婆術」として知られるこのアプローチを深めました。

ソクラテス式問答法の特徴

ソクラテス式問答法（英: Socratic Method）は、特定の命題に対して相手に質問を投げかけ、支持または反論を通じて議論を進める一連のプロセスです。この手法は「エレンコス（Elenchos）」とも呼ばれ、対話者が自らの立場や誤りを認識するための効果的な手段です。歴史的には、ソクラテスが友人たちと行った対話がその起源であり、彼の方法は他者と共に真理を見出す手助けを目的としています。

エレンコスのメカニズム

エレンコスは、対話者が提示した命題が本当に正しいのかを試すために、以下のようなステップを踏みます：
1. 対話者が命題を示す（例：「勇気は魂の持続である」）。
2. ソクラテスはその命題が誤りであると仮定し、反論を試みる。
3. さらなる前提に同意するよう導き、それが対立する結論に繋がることを示す。
4. 最終的に、対話者に正しい命題が何なのかを考えさせる。

この方法は、時にはアポリア（何も言えない状態）に終わることもあり、その過程で対話者の無知を明らかにすることが目的です。

産婆術としての問答法

プラトンの著作でソクラテスは自身の問答法を、母親が助産を行う様子に例えています。この「産婆術」は、知識や意識の明確化を目指し、対話者の内なる理解を引き出す手段として重要な役割を果たします。この比喩は、真理を明らかにし、新たな洞察を得るために必要な過程を象徴しています。

応用例

他者の信念体系を検証するソクラテス式問答法は、倫理や道徳、哲学において重要な役割を担っています。例えば、ソクラテスは「正義」や「勇気」といった概念についての議論を通じて、それらの本質を明らかにしようとしました。またこの方法は、現代の心理療法においても広く応用されており、特にアドラー心理療法や認知行動療法で利用されています。これらの心理療法では、問答法が意味や意義を明らかにする手段として役立っています。

制約条件の理論における活用

さらに、工業や製造の生産プロセスの改善にも問答法が採用され、互いに矛盾する制約条件を解決する手段として用いられています。エリヤフ・ゴールドラットの著書では、この手法がどのように活用されるかが解説されています。

結論

問答法は、対話を通じて人々が真理を探求し、知識を深めるための有効な手法であり、その影響は古代ギリシャに留まらず、現代にも広がっています。ソクラテスは、自他ともに無知を認識することが智恵への第一歩であると信じており、その思想は今なお多くの分野で応用されています。

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