善光寺式阿弥陀三尊

善光寺式阿弥陀三尊とは

善光寺式阿弥陀三尊（ぜんこうじしきあみださんぞん）は、信州善光寺の本尊を模して作られた阿弥陀如来像の形式で、善光寺如来とも呼ばれます。この形式は、中国の南北朝時代の金銅仏を起源とし、鎌倉時代以降に日本各地で盛んに制作されました。

特徴

彫刻史においては、「善光寺式阿弥陀三尊像」と称されます。その主な特徴は以下の通りです。

一光三尊形式: 中尊の阿弥陀如来、両脇侍の観音菩薩と勢至菩薩の3体がすべて立像で、大きな舟形の光背によって一体化されています。この形式は「一光三尊」と呼ばれます。
独特の印相と法衣: 一般的な阿弥陀如来像とは異なり、善光寺式の阿弥陀如来は左手が「刀印」を結び、法衣は両肩を覆う「通肩」です。これは、他の阿弥陀如来像に見られる左手が「与願印」で、法衣が「片方の肩」を覆う形式とは対照的です。
脇侍の印相と宝冠: 両脇侍は胸の前で両手を重ねて「梵篋印」を結び、独特の宝冠をかぶっています。

善光寺本尊の具体的な寸法については、1692年の検分記録『善光寺由来記』によると、中尊の高さは約45cm、重さ約24kg、脇侍の高さは約30cm、重さ約0.6kgとされています。また、国の重要文化財である前立本尊は、中尊が42.4cm、左脇侍が30.5cm、右脇侍が30.2cmと記録されています。

歴史

一光三尊形式の起源は古く、宋代の金銅仏にその原型が見られます。特に、北魏時代の石像には、善光寺如来と似た例が見られます。また、南梁時代の石造漆金仏坐像には、刀印や梵篋印が見られ、善光寺如来に酷似しています。

善光寺式阿弥陀三尊像は、鎌倉時代から室町時代にかけて盛んに造像されました。現存する像は200体以上で、そのうち41例には造像年が記されています。多くは高さ50センチ内外の銅製の小像ですが、甲斐善光寺像のような大作や、広島・安国寺像のような等身大の木像も存在します。

代表的な作例

以下に、主な善光寺式阿弥陀三尊像の例を挙げます。

甲斐善光寺像（山梨県甲府市）：建久6年（1195年）作
向徳寺像（埼玉県嵐山町）：宝治3年（1249年）作
東京国立博物館像：建長6年（1254年）作
円覚寺像（神奈川県鎌倉市）：文永8年（1271年）作
安国寺像（広島県福山市）：文永11年（1274年）作、木造で中尊像高171cm
銅造阿弥陀如来及び両脇侍像（福島県いわき市所蔵）：重要文化財

関連事項

善光寺式阿弥陀三尊像は、仏教美術における重要な形式の一つです。その独特な特徴は、日本の仏像彫刻の多様性を示す好例と言えるでしょう。関連する仏像形式としては、釈迦三尊、薬師三尊、清凉寺式釈迦如来像などが挙げられます。

参考文献

長野県立歴史館『開館15周年春季企画展 善光寺信仰 -流転と遍歴の勧化-』
* 宮本健次『善光寺の謎 今明かされる「怨霊封じ」の真実』 主に第四章 日本最古の本尊

これらの参考文献は、善光寺式阿弥陀三尊像の研究において重要な情報を提供しています。

まとめ

善光寺式阿弥陀三尊像は、その独特な形式と歴史的背景から、日本の仏教美術において重要な位置を占めています。鎌倉時代以降に盛んに制作され、現在でも多くの作例を見ることができます。これらの像は、当時の人々の信仰や文化を伝える貴重な資料と言えるでしょう。

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