喘鳴症

喘鳴症について

喘鳴症（ぜんめいしょう）は、馬が持つ呼吸器系の疾病の一つで、喉鳴りとも呼ばれます。この病気は、特に競走馬においてはそのパフォーマンスに深刻な影響を与え、場合によっては引退に追い込まれることもあります。歴史的には、名馬タニノムーティエやゴールドアリュールがこの症状のために引退を余儀なくされました。

分類

喘鳴症は、その症状によっていくつかのタイプに分けることができます。中でも、最も一般的なものが喉頭片麻痺です。この病状では、声門裂の開きが不完全となり、馬が「ヒューヒュー」と言った乾いた音を発生させます。通常、馬の気道は背側輪状披列筋が収縮することによって小角突起が引っ張られ、声門裂が開き、空気がスムーズに取り込まれる仕組みです。しかし、喉頭片麻痺によりこの筋肉が麻痺すると、小角突起が垂れ下がり、気道が縮小されてしまいます。このため、特に運動中に十分な換気ができなくなってしまうのです。

喉頭片麻痺の原因

喉頭片麻痺の具体的な原因は明確には解明されていませんが、大部分は麻痺した反回喉頭神経に起因すると考えられています。驚くべきことに、この麻痺は99%以上の場合、左側の神経で発生します。このため、反回喉頭神経の特性—特に左側が右側よりも長いこと—がこの病気の発症に関与しているという説があります。また、遺伝的要因や呼吸器感染が発症の要因として議論されています。日本の競走馬総研によれば、遺伝性の喉頭片麻痺の発症率は約23%で、特に500㎏を超える大型の牡馬に多く見られる傾向があります。

診断と治療

診断は通常、内視鏡検査を通じて行われますが、軽度の症状の場合はトレッドミルを使用して高速度での走行中に検査する必要があることがあります。治療法としては、喉頭形成術が挙げられます。この手術では、麻痺した小角突起を引き上げ、喉頭の入り口を広げることを試みます。成功すれば呼吸の改善が見込まれる一方、手術によって合併症が生じる場合もあります。現に、名馬ダイワメジャーはこの手術の後、4回のG1競走に勝利し、8億円を超える賞金を獲得しました。

其他の症状

喘鳴症には他にも、軟口蓋の背方変位や喉頭蓋エントラップメントといったタイプがあります。軟口蓋の背方変位では、馬が食物を取る際に喉頭蓋が軟口蓋に潜り込み、「ゴロゴロ」「ゲロゲロ」という音を鳴らすことがあります。主に育成期の若馬に多く見られ、内視鏡検査によって特定されます。
喉頭蓋エントラップメントは、喉頭蓋の根元にあるヒダが持ち上がり、呼吸を妨げる症状です。この場合は、持ち上がった部分を切開して治療します。この病状の発症例は少ないものの、最近ではシーキングザパールやグランアレグリアなども経験しています。

喘鳴症は馬の競走能力に大きな影響を及ぼすため、適切な診断と治療が求められます。関係者は、この病気の理解を深め、早期対応できる体制を整えることが重要です。

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