喜久田ゆい

日本の女性漫画家、喜久田ゆい氏は、複数の名義で活動を展開している。現在は主に「喜久田ゆい」として知られるが、かつては「浅野伽々（あさの きゃきゃ）」の名で作品を発表していた時期もある。12月22日生まれ。そのキャリアは、異なる出版社から二度のデビューを飾るという珍しい経緯をたどっている。

漫画家としての第一歩は、2000年に「浅野伽々」名義で踏み出された。この年、「風のうた」で第25回アテナ新人大賞の新人賞を受賞。同賞受賞後、『ザ花とゆめ』（白泉社）の同年6月1日号に掲載された短編「月明りにてらされて」で商業誌デビューを果たした。この頃、彼女は漫画家・種村有菜氏のアシスタントとしても活動しており、その技術を磨いていた。しかし、後に自身の名義を変更して再デビューするに伴い、アシスタントとしての期間を終えている。

「喜久田ゆい」名義での新たな活動は、2006年に始まった。この年、「TrickofTreat」が第6回ZERO-SUMコミック大賞で読者大賞を受賞する。これを契機に、『コミックZERO-SUM』（一迅社）の同年9月号に掲載された「僕とカラクリ」で、新たな名義での再デビューを飾った。

『コミックZERO-SUM』誌上を中心に、喜久田ゆい氏の本格的な連載活動がスタートする。2007年8月号から2009年10月号にかけて連載されたファンタジー作品『少年羽狩人』で、初の長期連載を経験。その後も、魔法と猫をテーマにした『魔法使いの猫』（2010年1月号 - 2013年4月号）、切ない物語を描いた『星の雨 月の下僕』（2013年10月号 - 2014年12月号）など、コンスタントに作品を発表した。

また、他作家の原作やキャラクター原案を基にした作画担当作品も手がけている。種村有菜氏原作による『瞬間ライル』（2015年12月号 - 2018年6月号）では、かつてアシスタントを務めた作家の作品を自身の筆で表現した。そして、特に近年、多くの読者から支持を集めているのが、由唯氏原作、椎名咲月氏キャラクター原案による『虫かぶり姫』のコミカライズ版である。2018年10月号から連載が始まり、現在も好評連載中である。この作品は、その質の高さが評価され、2021年には「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2021」で第4位に選ばれるなど、大きな成功を収めている。

私生活においては、2008年11月に出産を経験しており、仕事と育児を両立させながら精力的に活動を続けている。

これまでに刊行された単行本は、喜久田ゆい名義で多数に及ぶ。主な作品としては、『少年羽狩人』（全4巻）、『魔法使いの猫』（全5巻）、短編集『ある日、魔女が世界を滅ぼした』（全1巻）、『星の雨 月の下僕』（全2巻）、『瞬間ライル』（全4巻）、そして現在も続刊中の『虫かぶり姫』（既刊10巻）などがある。これらの作品は、ファンタジーやミステリー、人間ドラマなど、幅広いジャンルにわたる。

アンソロジー集への参加や、小説の挿絵、特典小冊子のイラストなども手がけるなど、多方面で才能を発揮している。過去には、種村有菜氏のアシスタント時代に、同じくアシスタントであった水瀬藍氏と共に同人サークル「Strawberry Lunch」で活動していた時期もあるが、これは水瀬氏の商業デビューに伴い活動を停止している。

喜久田ゆい氏は、二つの名義、二度のデビューというユニークなキャリアを通じて、読者に多様な物語を届け続けている。特に『虫かぶり姫』の成功は、その作画力が広く認められた証と言えるだろう。公式サイトやSNSなどを通じて、精力的に情報発信も行っている。

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