営業税

営業税：日本の税制史における一断面

この記事では、日本の歴史における営業税の変遷について詳細に解説します。明治維新後の混乱期から戦後の税制改革まで、その制度設計、社会経済への影響、そして国民の抵抗運動といった様々な側面に焦点を当てていきます。

営業税の起源と国際的な比較

営業税は、商工業者の営業活動に対して課される租税です。その歴史は古く、中世のビザンツ帝国や北宋など、商工業が発展した国々では、営業許可と引き換えに課税が行われていました。日本においても、江戸時代の小物成や運上金などが類似の税制として存在していました。

明治維新後、従来の税制は廃止され、新たな税制が模索されました。当初は「営業免許料」などの名目で徴収が行われていましたが、近代的な営業税は西欧諸国で確立された「営業の自由」という概念を背景に生まれました。フランスやドイツでは18世紀末から19世紀初頭にかけて営業税が導入されており、日本もこれらの影響を受けていると考えられます。

日本の営業税：地方税から国税へ、そして再び地方税へ

日本で営業税が制度化されたのは1878年、地方税としてでした。当初は営業の規模に応じて税額が異なり、会社や卸売業者には高額な税金が課せられていました。しかし、この制度は短期間で廃止され、その後、1896年に日清戦争後の財政難を解消するために、営業税は国税として復活します。

この新たな営業税は、資本金、売上高、従業員数などを基準とする外形標準課税でした。しかし、企業の実態を反映しない課税方法や、税率の高騰を背景に、商工会議所や小売業者を中心に強い反対運動が巻き起こります。特に、1897年、1914年、1922年には大規模な反対運動が発生し、営業税の廃止もしくは減税を求める声が社会に広がりました。

こうした世論の高まりを受け、1926年には営業税法が改正され、「営業収益税」へと名称変更されました。課税対象や税率も変更され、営業純益を基に算出されるようになりました。しかし、戦時体制下では税率が引き上げられ、国民の負担は増加の一途を辿りました。

戦後、1947年には営業税は再び地方税へと移譲され、「事業税」へと名称が変更されました。その後、1950年にはシャウプ勧告に基づく事業税の全面改正が行われ、従来の営業税の体系は完全に姿を消しました。

営業税と社会運動

日本の営業税の歴史において特筆すべき点は、国民による激しい反対運動の存在です。営業税は、企業規模に関わらず一律に課税される点や、税率の高騰といった点で批判を浴び、社会問題となりました。これらの反対運動は、日本の近代民主主義発展における重要な一端を担っていたと言えます。

まとめ

日本の営業税は、その歴史の中で何度も制度設計や課税対象、税率の変更を繰り返しました。地方税から国税へ、そして再び地方税へと変遷する過程において、常に社会経済情勢や国民の政治参加といった複雑な要因が絡み合っていました。営業税の歴史を紐解くことは、日本の近代化と税制史を理解する上で重要な視点となるでしょう。 また、現代の税制を考える上でも、過去に起こった出来事から学ぶべき点が多く存在すると言えるでしょう。

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