嘉南大圳

嘉南大圳（かなんたいしゅう）

嘉南大圳は、1930年（昭和5年）に竣工した台湾最大規模の農水施設であり、日本統治時代における最重要水利工事の一つです。この施設は、現在の雲林県、嘉義県、台南市を中心とする嘉南平原地域の農業を大きく変革しました。

工事の経緯

日本統治時代初期の嘉南平原は、灌漑設備が不十分な農地や甘蔗農園が広がり、日照りや豪雨、排水不良といった問題に常に悩まされていました。その面積は約15万甲（約1,455km²）にも及びます。この状況を打開するため、台湾総督府は曽文渓と濁水渓を水源とする大規模な農水施設の建設を決定しました。

設計を担当したのは、当時台湾総督府の技師であった八田與一です。1920年9月に土木工事が開始され、総工費5,414万円をかけて、1930年4月10日に竣工しました。工事は、まず当時東南アジア最大規模であった烏山頭ダムの建設から始まりました。その後、水路が開削され、曽文渓と濁水渓という二つの水系が接続されました。

施設の概要

嘉南大圳は、烏山頭ダムで取水された水を、北幹線と南幹線という二つの主要な水路に分けています。

北幹線: 烏山頭ダムから北へ向かい、急水渓、八掌渓、朴子渓を越えて、北港渓の南岸へと至ります。
南幹線: 烏山頭ダムから南へ向かい、官田渓、曽文渓を越えて台南市善化区へと至ります。

また、烏山頭ダム以外にも、濁水渓に3箇所の取水口が設けられています。これらはそれぞれ、林内第一取水口、林内第二取水口、中囲子第三取水口と呼ばれています。林内第一取水口から取水された水は濁幹線を通り、旧虎尾渓の左岸に沿って南下し、北港渓に至って北幹線と接続されます。

施設の効果

嘉南大圳の完成により、嘉南平原の耕地面積と水利灌漑面積は著しく増加しました。多くの畑が水田へと変わり、農作物の生産量は飛躍的に拡大しました。これにより、地域の農業経済は大きく発展し、人々の生活水準も向上しました。

嘉南大圳は、単なる灌漑施設としてだけでなく、地域の発展に大きく貢献した重要な遺産です。八田與一の功績とともに、今もなお台湾の人々に深く記憶されています。

参考文献

呉密察監修、横澤泰夫日本語版編訳「増補改訂版台湾史小辞典」（2010年）中国書店（福岡）

関連項目

八田與一
日本統治時代の台湾
KANO 1931海の向こうの甲子園
* 旧嘉南大圳組合事務所

外部リンク

[外部リンク] 嘉南大圳に関する情報（関連機関のウェブサイトなど）

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